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Jリーグ再開へ。ラ・リーガやプレミアのような政府の「『安全宣言』待ち」も選択肢に?賀来教授、村井チェアマンが見解

Jリーグの村井満チェアマン。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI

学校が休みでもスポーツ開催可能。米国のフェーズについても共有する。

 一般社団法人日本野球機構(NPB)と公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)による「新型コロナウイルス対策連絡会議」の第6回会議が4月23日に行われ、その後、NPBの斉藤惇コミッショナー(日本プロ野球組織コミッショナー)、 Jリーグの村井満チェアマン、「専門家チーム」の賀来満夫氏(東北医科薬科大医学部)、三鴨廣繁氏(愛知医科大大学院)、舘田一博氏(東邦大医学部)による記者会見を実施した。今後はプロ野球、Jリーグともに「無観客試合」での再開を目指すものの、感染が全国の市井に広がり、都市部など医療現場のひっ迫した状況を考慮すると、再開時期について現状では見通しを経てられないことが改めて報告された。

 Jリーグに関しては二度の再開延期が決まり、現在はスケジュールが「白紙」となっている。

 そうしたなか、スペイン・リーグ(ラ・リーガ)、イングランドのプレミアリーグは、政府が国民の健康に関して、問題がないと判断するまで、プロサッカーリーグを再開しないことで合意している。日本とは様々な面で状況が異なるものの、スペイン、イギリス両国ともに新型コロナウイルスによる甚大な被害が出るなか、市民が生活のサイクルをまず取り戻すことが、リーグ再開の前提であるという立ち位置だ。

 つまり、リーグ再開へ、政府や自治体からの「安全宣言」を待つという”最後の選択肢”もあり得るのか? その質問に対し、座長の賀来氏、村井チェアマンは次のように見解を示した。

 賀来氏は同会議の中で再開に向けて提言していくなか、最終的にはJリーグの”決断”に委ねられるという考えを示した。また、国やスポーツ庁、各自治体の支援も重要になると訴えた。

 基本的な立場は感染症の専門家としての「対策」を伝えること。「例えばこの専門家チームがGOサインを出さないと試合を開催できないのかというと、それは少し違うのかなと私は感じています。私たち専門家はあくまでも、(Jリーグとプロ野球の)開催にあたっての経済面など細やかなことまで、責任を持っては、お伝えできないわけです。

 ただ、今の段階の中で、できるだけリスクを下げるために『こうした方法論があります』『こうしたほうが選手、観客の方もリスクを低くできると思います』といった方策や提言をお伝えできます。そのうえで、国や地域自治体、国民の立場を含めて、やはり判断していく必要があると思います。

 決定していくのは、プロ野球、あるいはJリーグの皆さんの判断になりますが、そのためには、行政がしっかり支援する、バックアップする姿勢も必要で、独自の判断は難しいと思います。

 私たち専門家の提言に基づき、中止という判断は簡単にできます。ただギリギリの選択のなかで開催していくのかどうか。専門家としての提言はさせていただきますが、公共性の高いスポーツに対し、政府や自治体、スポーツ庁などがどのように後押しするかも非常に重要になってくると個人的に思っています」

 一方、村井チェアマンは次のように語った。

「もちろん私たちは専門家ではありませんので、政府の答申は丁寧に受け入れるように考えています。加えて、今回の対策連絡会議では専門家の方々に、スポーツの特殊性を理解していただき提言をいただいています。場合によっては、全選手にアンケートを取り、選手が思っていることに対して答えていただけるということで、スポーツ界にとって極めて重要な意味を持ちます。

 政府が国民全体へのマストなリスクマネジメントを呼び掛けるとすれば、スポーツ選手固有の提言をいただき、再開にあたってはもちろん多いに参考にしていきたいと考えています。

 実際、今日、参加メンバーの中から、選手は練習や試合後、極めて免疫力が低下するという説明がありました。サッカーの場合、十数キロ走りますので、健康な一般的な人以上に消耗し、免疫力が低下します。強靭な体を持つとはいえ、実は時と状況によって、非常にリスクにさらされるという選手の特殊性についても報告がありました。そういった意見を参考にし、共有しながら、我々は臨んでいこうということです。

 また、アメリカでのスポーツの再開パターンに向けた3段階のフェーズの説明があり『フェーズ1』では、学校などが休止していても、スポーツは一定の制約条件下で再開できるという話があり、共有しました。スポーツが国民を鼓舞し、様々な希望を与える可能性もあると信じています。第一は国民の健康に置きながら、よくよく意見を注視し、再開に向けた準備をしていきたいと考えています」

 このあと例えば非常事態宣言が緩和されたあと、リーグを”再開できるのではないか”という状況になった時、この対策連絡会議での知見とこれまでの準備が、必ずや生きるはずということだ。もちろん先は読めないものの、試合再開への”説得力”を持たせられるだろういう見解だ。

 そう考えると、スムーズに試合開催するためには、行政との連携も重要だ。今後はこの対策連絡会議での提言などについて、各クラブと自治体(都道府県、市町村)での情報共有、自治体やスポーツ庁などの機関から理解を得ることもポイントになってきそうだ。

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[取材・文:塚越 始]

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