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【JFA】指導者資格「A-pro」新設、WEリーグで指揮しS級取得可能。「職業として女子指導者を目指せる環境に」

(C)JFA

元なでしこの現場復帰にも期待。「女子サッカー界に火をつけ、サッカー界全体の発展につなげたい」

 日本サッカー協会(JFA)は8月3日、来年のWEリーグ発足を契機に「職業としての女性指導者」の確立を目指すうえで、「Associate-Pro(A-pro)ライセンス養成講習会」を開設すると発表した。A-proライセンスを取得するとWEリーグに参戦するチームの監督を務められる。そこからS級の取得試験も受けられる。A級の上にあたる資格で時限的な措置として、今後の指導者育成につなげていく。

 JFAは日本サッカー全体の発展に向け、女性の競技人口の増加と次世代のリーダー育成プロジェクトを推進。特に2021年の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」の立ち上げを起爆剤とし、JFAとWEリーグが両輪となって日本女子サッカーの継続的な発展を目指していきたい意向である。その施策の一つとして、2020年9月に女性指導者を対象とする「Associate-Pro(A-pro)ライセンス養成講習会」を開設することを決めた。 

 このコースは、WEリーグの監督となり得る人材養成を目指すとともに、世界のサッカー界における女性指導者のリーダーとなる人材を育成することを目的とする。

 AFC-Pro基準に相当する新ライセンスで、WEリーグでの指揮が可能となる。それ以降、Jリーグの指揮が可能となるS級の試験を受けることもできる。

 日本サッカー協会技術委員会の小野剛副委員長、女子委員会の今井純子委員長が8月3日にオンラインによる記者会見を実施。小野副委員長は少子・高齢化をはじめとする環境変化、さらには東京五輪の延期や女子ワールドカップ招致撤退と逆風を受けるなか、「一回サッカーを辞めてしまった彼女たちが、もう一度サッカーに戻って来てくれること。それは私たちにとっての死活問題でもあります。もう一度女子サッカー界の火をつけて、サッカー界の発展につなげようと始まったプロジェクトです」と説明した。

 日本のサッカー競技者の中で、女子のサッカー指導者を目指すのは1.6パーセントと、2パーセントにも満たない人数である。WEリーグ発足を契機に、小野副委員長は女性指導者を育てるための施策をこれまで議論してきたと説明した。

「UEFAの国々のように毎年必ず(S級相当など)女性枠を設け育てて継続していく、そういったことをやっている国があり、そこは我々と差が出ています。政策に問題がなかったか、女性指導者はレベルが低いと無意識のうちに色眼鏡で見ていないか、選手にもそういった感覚を持たせていないか、そういった反省からWEリーグ誕生に合わせ、S級ライセンス保持者を育てたいと考えてきました。一方、公平性を保つための議論を1年間した結果、『A-poライセンス』を設けることを決めました。準プロライセンスになります」

 つまり「女子サッカー指導者」を「職業」としていく。そのための、まず『頂点』のライセンスの整備となる。

 小野副委員長は「私も経験していますが、職業としてのコーチを思い描けない時代が続き、思い切ってA級、S級に挑むことが難しい。その突破口となって、この『A-Pro』を活用し、職業として指導者をやっていけることを見せてくれれば、さらに続いてくれるのではないかと期待しています」と説明した。なでしこジャパンで活躍してきた選手たちの“現場復帰”にも期待を寄せていた。

 また今井女子委員長は、女子指導者が子供たちの“憧れ”になっていく環境づくりの重要性も説いた。

「男性の指導者が多いのは、選手としてプレーしている間に、様々な指導者が身近にいて、自分が何らかの形で指導するイメージがしやすいとも感じてきました。一方、女性はそういった機会がまだ足りません。ロールモデルとしての女性指導者が増えていくことで、女の子たちにとって、そういった環境が当たり前になっていける。また指導者ライセンスを取得するだけでなく活躍する場も設けていくことも大事になります。女子サッカーが産業であり仕事になっていく、指導者とやっていけるイメージを広げていきたいです」

 JFA技術委員会の反町康治委員長はこの正式発表のプレスリリースで、次のようにこの制度の意義を説明している。

「現在、日本サッカー協会へ登録してくださっている選手は88万人いらっしゃいます。しかしその中で女性の割合はわずか約6パーセントに過ぎません。少子高齢化、人口減少が進んでいるなか、女性の競技人口が増え、登録者全体に占める割合が増えていくことは、日本サッカーの継続的成長につながっていくものと考えています。 今回設立された日本女子プロサッカーリーグ『WE リーグ』によって湧き上がる女子サッカーへの関心、注目の高まりは日本サッカー界としても大きな好機だと考えています。 技術委員会、女子委員会が一丸となって、女性競技者、指導者の増加や女性リーダーの養成に取り組むことで女子サッカ ーの普及拡大、競技力向上に貢献していきたいと思います」

 今後は裾野拡大の取り組みも課題になってきそうだ。WEリーグが、日本サッカーに新たな風を起こそうとしている。

JFA技術委員会の小野剛副委員長。(C)SAKANOWA 協力:JFA
JFA女子委員会の今井純子委員長。(C)SAKANOWA 協力:JFA

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[取材・文:塚越始]

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