【W杯23人枠の行方】落選の岡崎慎司はむしろ”計算が立つ存在”。小林悠と杉本健勇に求められる「結果」
E-1東アジア選手権の中国戦でA代表初ゴールを決めた小林悠。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
ハリルが欲する『ストライカー』。溜め込んだパワーを日本代表に還元できるのも岡崎慎司だと織り込み済み。
FIFAワールドカップ・ロシア大会(6月14日~7月15日)に向けて、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が3月19日からのベルギー遠征(キリンチャレンジカップ2018 in EUROPA 23日マリ戦、27日ウクライナ戦)に臨むメンバー26人を発表した。
今回、招集されたセンターフォワードは小林悠、杉本健勇、大迫勇也の3人。ハリルホジッチ監督は3月15日のメンバー発表の記者会見で、「(小林と杉本は)ここ最近、本当に伸びてきています。プレーの仕方を変えて、日本で素晴らしい結果を残していると思います」と評価するとともに期待を寄せた。
ハリルホジッチ監督は「真ん中の選手(センターフォワード)が何をすべきか。アグレッシブに背後を突き、ペナルティエリア内で存在感を示すこと」を前提にしたうえで、「第1(最終)ラインからの組み立てを防ぐこと。それもしっかりやってくれる」とプレッシングを怠らない守備面についても着目していた。
日本代表の前線の柱となった大迫だが、ケルンではCF起用も時々あるものの、トップ下やサイドハーフでの起用が中心だ。ボールを確実にキープできる能力はブンデスリーガの中でも高く、その”懐の深さ”をどこで生かすのかを模索する間に、チームが低迷していったと言える。
「大迫はクラブではサイドや後ろ(トップ下、センターハーフ)でプレーしていますが、背後を突く動きから素晴らしいゴールも決めています。ただクラブとは違ったパフォーマンスを代表ではしてほしい。本人とよく話し合いますが、選手を背負うだけではなくゴールに向かって行ってもらいたい」
そう話していたように、指揮官がCFに欲しているのは何よりゴールだ。「もちろんゴールすることが最も難しい仕事」とも語っていたが、「1年前に呼んだ選手を信頼するのではなく、現在良い選手を呼ぶ」と何度も繰り返しており、好調な選手を最も欲しているのがこのポジションだと分かる。
その意味でも、ワールドカップ開催前の時点で好調かどうかも大きな選考基準になる。小林と杉本は今回のベルギー遠征で、指揮官が求める戦術面での要求に応え、加えて「結果=ゴール」を残したい。
昨季J1最終節の川崎ー大宮戦(川崎5-0勝利)、小林は「ゴールを奪って勝つことしか考えていなかった」と語り、ハットトリックを決めて、逆転優勝を手繰り寄せた。そのように小林と杉本は、ゴールを奪うことでチームの力になる、と「1点」に一段とこだわるようになり、川崎にリーグ優勝、C大阪にナビスコカップと天皇杯の2冠をもたらした。確かに日本代表が今欲しているのは、そういったタイプだと分かる。
一方、昨年9月から選考外が続く岡崎慎司だが、『ストライカー』としては物足りないという大迫との共通点が影響したと見ていい。
「岡崎とは異なるクオリティを持った選手たちを選びました。点を取れる選手。チームに何かをもたらせる選手。(コンスタントに試合に出ているものの)岡崎がレスターで求められているのは、代表とは異なる仕事です。だからタイプの違う選手を選びました」とハリルホジッチ監督は岡崎をメンバーから外した理由を説明していた。ただし逆説的に、指揮官の言葉からはある意味、岡崎への信頼も感じられた。監督があくまで訴えていたのは出場機会を得られていない選手は呼ばないということ。岡崎はすでに十分計算が立つ、と考えられていることも伝わってきた。レスターでは今季、負傷欠場した間もあったが、セカンドトップで24試合6得点2アシストを記録しているのだ。
さらに前線を活性化できる選手はいないか、何かチームに変化をもたらす選手はいないか。今回の小林と杉本の選出には、そういった意図が感じられた。
そして、再び代表に呼んだとき、溜め込んだパワーを一気にチームに還元できる――それが岡崎慎司であることも織り込み済みだと。
理想は小林や杉本がゴールを決めて、前線の選手たちの競争意識をさらに駆り立てること。今後のメンバー選考で、ハリルホジッチ監督に嬉しい悲鳴を上げさせるような活躍を、ベルギーでのマリ、ウクライナ戦で見せたい。
文:サカノワ編集グループ