【アルガルベの屈辱➀】6失点のなでしこ、転換点は”三者”の意識を一つにした選手ミーティング
アルガルベカップに臨んだなでしこジャパン。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
新主将の熊谷紗季が立ち上がる。「ボールに行かなければ——」
なでしこジャパン(日本女子代表)は2月28日から3月7日まで開催された12か国が集ったアルガルベカップ(ポルトガル)を、2勝2敗の6位で終えた。
グループステージ初戦、昨年の女子EUROチャンピオンのオランダ戦で、まさかの6失点を喫した(スコアは2-6)。様々な準備をしてきただけに、いきなりチームが行き場を失いかねない窮地にいきなり立たされた。高さとスピード……勢いのあるチームを前に、たちまち日本ゴールが陥落。修正するためのキッカケを掴む間もなく、その後も得点を量産されていった。過去にない一方的な展開。まさにサンドバック状態だった。
これまでのしわ寄せが来た。世代交代をしながら、チームの土台を作ろうとしてきた。歴戦のなでしことして世界を知るベテランと、ユース世代から高倉麻子という指揮官を知り尽くしている若手。さらに、どちらも知らない真っ白な新たな人材もプラス。そういったメンバー構成だった。
雰囲気は上々だったが、プレー面では徐々に問題点が浮き上がってきていた。高倉監督はあえて選手を固定せず選手の底上げを図ってきた。試合ごとに組む選手が代わるのは当然の風景となっていた。その弊害として連係は深まらず、淡泊な失点も増えてしまった。その結果、オランダのように地力のある相手に、これまでアジアなどの国との対戦では個人技で対応し、曖昧になっていたことが、誤魔化しきれなくなった。
大量失点は必然だったといっていい。その1敗によって順位や成績うんぬんではない状況に陥ったが、むしろ初戦というタイミングだからこそ、その後に得るものもあった。熊谷紗季を筆頭に初めて選手全員のミーティングを開き、徹底的に話し合った。プレスのタイミング、カバーリング――。守る“型”を作ることに必死で、基本である球際での勝負が出来ていないことを再確認した。
「ボールに行かなければ、何も始まらない」(熊谷)
大敗は初めて共通のビジョンを描くキッカケになった。
このミーティングがターニングポイントになった。「大枠の考え方の方向付けはこっちでするけれど、実際にピッチでプレーするのは選手。遅すぎるくらいですが、やっと自立心が芽生えてきた」と高倉監督は語る。新体制下で2年を費やし、いざ期待を膨らませて臨んだ欧州をはじめ列強国との対戦。自信もプライドも一度粉々に砕かれたショックはあまりに大きかった。
ただ危機感が限界に達したことで、若手もベテランも新人も……ある意味、意識は共有できた。熊谷の言葉が伝播するように、“型”の追求ではなく球際に厳しく行く——と認識。その後、なでしこは自分たちのカラーを見つけていった。
(後編に続く)
※日本女子代表は4月、来年の女子ワールドカップ・フランス大会のアジア予選(ヨルダン・女子アジアカップ)に臨む。
取材・文:早草紀子
text by Noriko HAYAKUSA