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【現地取材】沖悠哉、大迫敬介、鈴木彩艶と川口能活が魂を通わす居残り練習。U-24日本代表

(左から)U-24日本代表の谷晃生、大迫敬介、沖悠哉、鈴木彩艶。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

ガーナ戦のあと、30分以上。沖は途中から半袖になり――。

[国際親善試合] U-24日本代表 6-0 U-24ガーナ代表/2021年6月5日/ベスト電器スタジアム

 U-24日本代表がU-24ガーナ代表に6-0の勝利を収め、東京オリンピックに向けてオーバーエイジ(五輪本番、24歳以上の3選手をエントリー可)の吉田麻也、遠藤航、酒井宏樹と五輪エイジの融合への一歩を踏み出した。

 すでに日本代表でプレーしている選手がほとんどである。それでも堂安律は「頼もしすぎる」、久保建英は「3人は中でも抜けている」と、オーバーエイジ組の存在の大きさを口にしていた。

 立ち上がりは高い強度を見せたガーナだが、早い段階で運動量が落ち、集中力も削がれていった。ただ、オーバーエイジ組の高い献身ぶりがそういった安心と信頼をもたらして生んだ、全く隙を与えない勝利だったと言えた。

 同時に18人枠を懸けた争いの絞り込みも進んでいる。今回27人と多めの選手が呼ばれているが、選手自身もそれぞれの立場を感じながらプレーしていることが感じられる。

 そうしたなかゴールキーパーはこの日フル出場した谷晃生、日本代表戦に出場した大迫敬介と沖悠哉、そして浦和で日本代表GK西川周作からポジションを掴もうとしている18歳の鈴木彩艶の4人が招集されている。オリンピックの登録メンバー18人に選ばれるのは、この中の2人(五輪は必ずGK2人と決められている)。ただ、日本サッカー協会の反町康治技術委員長によると、予備登録メンバー4人が登録され、彼らは大会中も18人のメンバーに負傷や疾病があれば入れ替え可能になる。そのうちGKに「1枠」も活用されることになるだろう(あくまでも選出は森保一監督)ということで、パンデミックの状況を考慮すれば、緊急時に備える重要な“戦力”と言える。

 いずれにせよ、この中からメンバーが選ばれ、試合に出られるのは一人だけというポジションだ。その厳しい戦いを常に続けてきた4人である。そして彼らをサポートするGKコーチは、この世界の酸いも甘いも誰よりも知る川口能活氏。2018年までSC相模原で現役を続けてきた、彼らの良き理解者でもある。それぞれがライバルであると同時に、川口コーチを中心とした一つの「チーム」として金メダル――あるいはさらにその先に向けて戦っている。

 ガーナ戦が終わったあとだった。

 試合後のリモートよる選手取材をホームスタンド側の記者席でしていた目の前、向かって左のゴールで、川口コーチと、この日出場機会のなかった沖、大迫、鈴木による居残り練習が始まった。

 汗を流す程度かな、と思って見ていたトレーニングは、次第に熱を帯びていく。ペナルティエリアの両サイドからGKの二人、最後は正面から川口コーチがシュートを打ち、それぞれ的確にポジショニングに取りながらセーブをする。それをローテーションさせていくメニューだ。

 いずれも今季J1リーグでレギュラーを務めている選手たちだけに、あらゆるプレーの精度もクオリティも高い。そして川口コーチの放つ1本1本に気持ちが込められたキックを、選手たちが高い集中力で弾き出していく。好プレーにはコーチの拍手と笑顔が送られる。相乗効果が生まれ、滅多に見られないレベルの高いトレーニングが行われていった。

 そのうち沖は着ていたジャンバーを脱ぎ、半袖のトレーニングシャツになっていた。練習は約30分を超え、グラウンドを使用できるギリギリまで博多の森での極上の鍛錬は続いた。

 充実していた様子が伝わってくる。川口コーチも選手たちも、1秒たりとも無駄にするものかという気概さえ感じられた。彼らには東京オリンピックの先に長い戦いが待っていて、同時に今ここでしか共有できない時間もある。ボールを通じて、魂を通わせあっている。大げさかもしれないが、そんな言葉がピッタリ合うような、見応えのある居残り練習だった。

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[取材・文:塚越始]

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