【なでしこ】18歳の木下桃香が語るまっすぐな言葉、そこに溢れる才能「局面を変えるプレー、できるはず」。東京五輪スウェーデン戦へ!
チリ戦で途中出場からオリンピックデビュー。木下桃香がスウェーデン戦のキーマンになるか。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
チリ戦でオリンピックデビュー。途中出場から流れを変え、田中美南の決勝点が生まれる。
東京オリンピックグループリーグ(GL)3節のチリ戦、決勝トーナメント進出には勝利が必須だったなでしこジャパン(日本女子代表)だが、試合はスコアレスのまま推移していった。そして18歳の木下桃香(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)が65分、ピッチに立ち今大会初出場を果たした。
FIFA(国際サッカー連盟)の特例により、バックアップメンバーから正式メンバー入り。そして今大会初めてベンチに座り、出場のチャンスを掴んだ。
高倉麻子監督から「思い切ってやってこい!」と背中を押された18歳のアタッカーはさっそくその力を見せつけた。ボールを正確に収め、ドリブルで進入してシュートまで持ち込んだ。そして、その流れから田中美南の決勝ゴールも決まった。
木下が大会前、インタビューに応じてくれた。
まだ彼女の名前を聞きなれない人も多いに違いない。なでしこのエース岩渕真奈も一目置く存在である。淡々と語られる“飛び級選出”の彼女のまっすぐな言葉から、いつ開花してもおかしくない溢れた才能を感じてもらいたい。
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—―これまでのサッカー人生で最も変化があったと感じる時期は?
「新しいチャレンジを始めたのは、メニーナからベレーザに上がった時、永田(雅人)監督(当時=現・ヘッドコーチ)の指導を受けるようになってからです。メニーナではボランチとしてボールを配球する役割が多かったのですが、ベレーザではアタッカーとしてチャンスメイクに関わる仕事を求められました。すると、やってみてしっくりきて、もっとやっていきたい! と思っていきました」
――人を生かす、人から生かされる。自信を持ってできるのはどちら?
「ベレーザはフォワードやウィングに武器を持つ選手が多く、今はラストパスやスルーパスが求められてるのかなと思います。昨年アタッカーをやって、今年はインサイドハーフも任されています。元々はそういうタイプだったこともあり、スルーパスでゴールキーパーと1対1の局面を作れたり、ゴールを決めてくれたりした時が一番嬉しいです」
—―憧れが去年までチームメイトだった阪口夢穂選手なんですね。
「はい。一緒に練習して、とにかく上手くて……。夢穂さんと一緒の時は、夢穂さんがパスを出す側で、私が受ける側でしたが、自分も逆を取られて反応できなくて(笑)。でも今だったら絶対ゴールに行けると感じます。そういうパスを出せる選手になりたいです」
—―一緒にプレーするようになり、阪口選手が目標になったんですか?
「メニーナの時にベレーザの試合見て、『この人ヤバイ!』と思ってたんですけど、一緒にプレーしたらそれが五割増しました(笑)」
—―その頃はもう少し後ろ目のポジションでしたね。
「もともと中盤の底のタイプだったので、その分、ベレーザに上がった時の世界の変わり方はすごかったです(笑)」
――現在の武器である鋭いドリブルはいつから?
「ベレーザに上がった最初の頃に膝をケガをしてしまい、そのリハビリの時にやった1対1で楽しい! と思って。ほんの1年前とかですよ」
――全くやってなかったわけではないですよね?
「ほとんどやっていなかったです。メニーナの時はドリブルで抜くなんてしていませんでした。そういうタイプじゃないと自分で勝手に思っていたところもありました。でもベレーザで生き残っていくには、そこをやらなければいけない。1対1やドリブルの練習をやっていくなか、自分の形というか、このタイミングなら抜ける感覚を、永田さんに教わったのは大きいです」
――なでしこジャパンではアタッカーとしての起用が多いと思います。男子高校生との練習試合では、余裕をもって冷静にプレーしているように見えましたが?
「最初はどれくらい通用するか試す感覚でやっていて、ちょっと剝がしてもすぐ追いつかれたり。『なるほど、こういう感じか』と。だからまずはボールを奪われないところから入っていきました。最後は割と相手がスピードを上げてくる分、逆を取りやすいと感じるようになっていきました」
—―やはり、冷静ですね。その場その場で瞬時に分析をしている。
「海外の選手との対戦経験もあまりないので、映像を見たり、先輩の話を聞いたりしているのでイメージ力だけは長けていて(笑)。世界の強豪は相当フィジカルが強いと想像しています。でも埋もれず、きっと逆を取りやすいからそのポイントを見つけられればできそう。未知ですが、そこは楽しみだったりします」
――頼もしい! 18歳でのなでしこジャパン選出については?
「初めて呼ばれた時は驚きました。正直、数か月か前でしたら『オリンピック狙いな』と言われても冗談として受け止めている自分がいました」
――なでしこジャパンにはベレーザでのチームメイトも多いです。そこまで混乱や衝撃はなかったのでは?
「手応えとはニュアンスが違うのですが、ベレーザに上がった時のあの衝撃がすごすぎて……もう全く違うスポーツに見えたんです。そこに必死に追いつこうとやってきたことがすべての基礎になっていると思います。ベレーザでやってることは絶対に代表でも通用する自信というか、クラブに対する誇りみたいなものがあるので、なでしこジャパンで自分が活躍することでそれを証明できたらいいなと思っています」
――なでしこジャパンで、チャレンジしたいことは?
「いいとは言えない流れの試合で、あとから映像を見返すと、自分の立ち位置とスキルだけで打開できたと思えるシーンがいくつもありました。チームが上手く行ってない時に局面を変えるプレーをしていきたいです。相手のフィジカルが強いなかでもスキルのところで自分次第で変えられるはずです。ポジション取りでも違ってきます。パスを受けた時に完全に相手の逆を取ってターンできたら全然違うなと思います」
――ぜひそのプレーを見せて下さい!
「サイドから中に入っていくドリブルもありますが、ベストは前を向いて真ん中から強引にでも仕掛けていくプレー。自分でゴールを奪うのも一つ、スルーやコンビネーションで崩すのもあり。いろんなオプションを持って戦いたいです」
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[文:サカノワ編集グループ]