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エントリー問題、浦和が追及したいルールの“大きな穴”

写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

Jリーグの主張「実行委員会・理事会で定めたルール」という説明もその通りであり――。

 選手エントリーの不備問題で6月の湘南ベルマーレ戦が規律委員会の裁定により「0-3敗戦」と没収試合の扱いとなったことを受けて、浦和レッズが日本サッカー協会(JFA)の「不服申立委員会」に「不服申立理由書」を提出していたが、7月28日にそれが却下されていたことが分かった。また、Jリーグは8月12日、この試合のマッチコミッショナーに対し、ガイドライン上の“違反”を認めて、無期限の割り当て停止の処分を下した。

 浦和とJリーグがこれまでに、それぞれの主張と見解を示した。

 ただ、この議論の何が問題なのか。どこで噛み合わなくなっているのか。改めて整理したい。

 Jリーグが一貫して主張しているのは、このコロナ禍での選手エントリー資格については、実行委員会・理事会を経て定めらた「正式なルール」であるということ。「コロナ禍の影響によるJリーグ規約規程」にもまとめられている。話し合い、課題を検証したうえで明文化された、Jリーグ全体で決めた規則である。浦和は、それを守れなかったのだ、と。

 一方、浦和は“現場”で戦ってきたことで、そのルールそのものの瑕疵に気付いた。今季は過密日程に加え、各年代の世代代表の活動も活発化し、あらゆる課題も見えてきた。しかも日本サッカー界の最大の目標だった東京オリンピックの金メダル獲得。その活動に鈴木彩艶を派遣したなか、そのJFAで受けた検査結果を浦和は「Jリーグエントリー資格認定委員会」に報告するのを怠る形になった。ただ、あくまでも鈴木自身はJFAの検査を受けて「陰性」であることは証明されていた。

 Jリーグは「エントリー資格のない選手」を出場させていた、と主張している。「リーグ戦実施要項13条」にはコロナ禍でのエントリー方法が詳しく書かれている。

 陽性者や濃厚接触者、その疑いのある選手が出場していわけではない。ただ、今回のように、そもそも「陰性」が(しかもJFAによって)証明されているにも関わらず、それでも“没収試合”にまでなる矛盾。それは今回の件が発生しなければ気付けなかったことでもある。要項の捉え方、あるいはチェアマンの介入で、もう少し建設的な落としどころを見つけられなかったのだろうか。

 最大の問題は、このルールにそもそもの「大きな穴」があったことだ。

 細かく規約が定められているが、明らかに欠陥が生じていた。

 代表活動に参加してJリーグの定期検査を受けられなかった場合、JFA実施の検査結果を、Jリーグ独自に定める「Jリーグエントリー資格認定委員会」に伝えることになっていた。

 鈴木はこれまでのJリーグ、JFAそれぞれの検査で問題なかったが、浦和は「Jリーグエントリー資格認定委員会」への報告を怠った。そのため6月23日の19節・柏レイソル戦はエントリーできないと判明。そこで浦和は、であればエントリーの資格のないまま20日の18節・湘南戦に鈴木が出場していたと分かり、Jリーグに報告した。

 そして浦和の“問い合わせ”から、「エントリー資格がなかった」と分かった。するとそこからJリーグはこの“問題”を規定通り規律委員会に諮り、その報告を受けて「0-3」没収試合という重罰を下したのだ。

 しかもJリーグの説明では、今回この事案が発覚するまで、分かりやすく言うと“もしかしたら、これまでにも同じようなエントリー問題が起きていて、資格のない選手が試合に出ていたかもしれない。しかし調べきれない”ということなのだ。

 浦和がJリーグに確認したことで「違反」が分かった。自分たちからJリーグへ相談にいったところ、逆に「没収試合」「けん責」という強烈パンチを食らった。

 このまま浦和がルールをよく分からないままだったら、問題が表面化してなかったかもしれないのだ。一方、Jリーグの定めるところの「エントリー資格」のないまま、これまでに公式戦に出ていた選手が他クラブでいたかもしれない。全く気付いていない、あるいは気付いているがもう報告する必要もない――そんなケースもあり得る。

 そのように規約には明らかな「穴」「瑕疵」があった。

 つまりルールとして不全だった。浦和が追及すべきは、その点である気もする。

 一方、浦和からJリーグに提出された「意見書」の趣旨が、クラブ公式サイトで発表されている。この内容に関しては、理解できる部分もあるが、浦和も実行委員会の一員であり、このルールを作った構成員でもあるという視点をやや欠いている印象を受ける。受理されなかった不服申し立ては別の内容とのことだが、問題点を多岐に広げてしまうと、争点の軸がぼやけてしまう感も否めないと感じた。

 また、この問題がはらむ、もう一つの危惧がある。

 あらゆる事業・運営のJリーグ本体への「一極集中」が進んできた。コロナ禍によりそれはさらに加速し、リーグ自体に「強大な力」が集約される。そうしたなか、フォント統一によるユニフォーム供給遅れの問題なども発生した。そのためのいろいろな面での乖離(あるいはリーグが追い付けていない)も少なからず感じられる。ただ、それだけ権力が集中すると意見するのさえ躊躇うわけだが、浦和は「これは明らかにおかしい」とはっきり異を唱えた。コロナ禍でちょっとしたコミュニケーションを取ることができない影響やジレンマも多分にあるが、「幸せ」を生み出す産業であるならば、奢らず手を取り合うようなスタンスは大切にしてもらいたい。

 このエントリー問題も凄まじいスケジュールをこなす中で浮き彫りになった。が、Jリーグが浦和とマッチコミッショーへの処分を下すことで、リーグ全体による建設的な議論へと発展せずにいる印象も受ける。むしろ、そんな重大なルールの瑕疵に気付けなかったJリーグにも責任があると言える。

 浦和はどのように出るのか。

 国内で法的措置を起こしたり、あるいはFIFA(国際サッカー連盟)に設けられている「不服申立委員会」に見解を仰いだりすることもできそうだ。現場の声や選手を守るためであれば、「争点」は明確にしたい。ただ、本来は「対立」を避けて、それぞれ理解し合いながら十分解決に向かえた問題だった気もする。

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[文:塚越始]

 

Posted by 塚越始

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