【戦評│浦和-札幌】好ゲームだったが、物足りなかったのはなぜか?
浦和の槙野(左)、札幌の荒野(右) (C)SAKANOWA
好調な両チームが見せた、興梠、都倉、両エースへの”完璧”な対応。
[J1 9節] 浦和 0-0 札幌/2018年4月21日/埼玉スタジアム
3連勝と好調な浦和レッズと北海道コンサドーレ札幌の一戦は、さまざまな局面で見応えがあった。ボールコントロール、キック、パス……前半は両チームともにペナルティエリア付近までボールを運ぶビルドアップでのミスがほとんど見られない。観ているほうも集中を切らさずに見入り、あっという間に45分間が過ぎていった。
折り返したあとの後半も、一進一退の攻防が続いた。浦和は柏木陽介の精度の高いセットプレーで再三にわたってゴールへ迫り、いつゴールが決まってもおかしくないという雰囲気を漂わせた。しかし、ク・ソンユン、キミ・ミンテを中心とした札幌守備陣のまさに魂の守備の前で、ゴールを割れない。一方、札幌も数少ないチャンスでシュートまで持ち込むものの、宮澤裕樹の決定的なヘッドも西川周作のビッグセーブに阻まれてしまう。
すると徐々に緊張感は伝わってくるが、何かが欠けている感じがしてくる。
結局、つまらないミスは、途中出場の兵藤慎剛が相手にプレゼントパスをした1本ぐらい。その1本があまりに目立つぐらい、ミスといえるミスは見られなかった。そして、スコアレスドローに終わった。
一体、何が物足りなかったのか。それは試合後、データを振り返ることで浮かんできた。
この試合の注目の一つが、リーグ4試合4ゴールを決めていた浦和の興梠慎三、3試合連続ゴール中だった札幌の都倉賢――両ストライカーの対決だった。しかしシュート数は興梠が0本、都倉は1本。連戦による疲労もあったに違いないが、二人はほぼ完璧に抑え込まれたのだ。
同じ3-4-2-1のシステムでの対峙。両チームの選手はこのシステムの最大のポイントがセンターフォワード(CF)であることを熟知していた。そのCFにボールを収めさせない、起点を作らせない……そこにまず重きが置かれ、3バックはミッションを遂行してみせた。
今季のJ1は試合終盤に空いたスペースを生かした撃ち合いの様相となる、いわゆるオープンな展開が多くみられる。観ている側としては間違いなく、そういった展開のほうが盛り上がる。
ただ、この日の両チームは高い集中力をキープして、そのような展開にさせなかった。高い守備の集中(とはいえ、ただひたすら守っていたわけではない)が、試合を引き締めていた。
「このまま崩れかねないところで踏ん張ることができた。そこは前向きに捉えている」
ノーゴールに終わったものの、都倉は勝点1をポジティブに受け止めていた。
そして浦和も大槻毅体制下で3勝1分とリーグ無敗で乗り越え、「オズワルド・オリヴェイラ新体制につなげたことを前向きに捉えられていた。「狙っていることはできた」と槙野智章は頷いた。
もちろん、その間に首位のサンフレッチェ広島は5連勝を果たし、両チームとの差を広げている。興梠、都倉はインパクトのある数多くのゴールを決めてきた。ただチームをさらに高みへ導くためには、こうした注目の一戦で、徹底マークを受けても強引に打破するようなゴールやプレーをより期待したい。
昨季途中まで浦和を5年半率いた札幌のペトロヴィッチ監督は、「どちらも負けたくないという非常に強い思いを持った試合だった。崩すシーンはなかなか見られず、引き分けは妥当な結果だった」と淡々と語った。
浦和と札幌。再戦は11月10日、今度は札幌ドームが舞台だ。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI