レアンドロ・ダミアンが結合させたガウショの勇敢さと川崎の繊細さ
天皇杯の鹿島戦でプレーする川崎のレアンドロ・ダミアン。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
獲得に向けて注目を集めたインテル・ナシオナルでのプレー。
その揺るぎない強さへの賞賛は、もはやチームを支持するサポーターだけに留まらない。
10月27日天皇杯準々決勝。川崎フロンターレは試合巧者の鹿島アントラーズを寄せ付けず3-1の勝利を収めた。J1リーグと合わせて2冠獲得への道をひた走っている。
夏場にチームの中核を担っていた三笘薫と田中碧が海外に移籍したが、シーズン終盤となった今、その強さは彼らが抜けたことを感じさせないほど安定感のある戦いぶりを見せている。
ピッチ全体を使った華麗なパスワークで相手守備陣を翻弄。1対1の局面では個人技を武器に勝負し、ゴールを目指すサッカーは観る人を魅了するエンターテインメントに満ちたスタイルだ。
攻撃に目を向ければ3トップのFW陣がそれぞれの特徴を生かしたプレーで光彩を放っている。
左にはドリブルを武器に鋭い突破を見せるマルシーニョ。スピードに乗ったプレーで相手陣内へと切り込みチャンスを演出する。
マルシーニョが“動”なら右サイドの家長昭博は“静”だ。冷静に状況を判断し相手の急所を突くパスで攻撃をリードする。
そしてセンターフォワードのレアンドロ・ダミアンは、リーグ戦で17ゴール(33節終了時点)を挙げ得点ランキング2位とストライカーとして存在感を発揮している。
レアンドロ・ダミアンは川崎に加入する前は母国ブラジルとスペインでのプレー経験がある。そのなかで彼が注目を受けたのはブラジル南部のリオ・グランデ・ド・スール州の州都ポルト・アレグレ市を本拠地としているインテル・ナシオナルでのプレーだ。
この地域は勇敢なガウショ(カウボーイ)の地で知られ、サッカークラブもその気質を継承するように伝統的にフィジカルを武器に戦うスタイルがチームの根幹となっている。
インテル・ナシオナルでの成功はダミアンがテクニックを駆使するリオ・デ・ジャネイロ州やサンパウロ州のサッカーとは違う、ブラジルでは異質なスタイルに順応した結果と言える。
そして2019年に川崎へと活躍の場を移す。しかし、セレソンを経験し、ロンドン・オリンピック得点王の実績を持つストライカーも移籍初年度は苦戦を強いられた。
本来の力を発揮できなかったのは、インテル・ナシオナルと川崎のプレースタイルが正反対だったことが起因していたのかもしれない。
しかし、徐々にチームスタイルを理解し、いまや不動の地位を築き上げた。今シーズンからは副キャプテンを務めてチームを牽引している。
試合では8月から加わったマルシーニョに対して「行け、行け」とチームコンセプトである前線からの守備を促し、ボール・アウト・オブ・プレーの際には敵の選手とも笑顔で会話を交わす。
ゴール前での落ち着き払った姿には自信と充実感が漂う。
インテル・ナシオナルで磨いたパワーを前面に出したダイナミックなプレーはそのままに、川崎で得た繊細さが加わった。タイトル獲得へと突き進む川崎で、背番号9番を背負うレアンドロ・ダミアンが、その最前線で勇敢にそして華麗に立ち向かい、ゴールを目指す。
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[取材・文・写真:徳原隆元]