「ネガティブな自分はもういない」浦和のGK福島春樹が大ケガを乗り越え3戦連続完封
浦和レッズの福島春樹 (C)SAKANOWA
土田尚史GKコーチの言葉が一つのきっかけに。
[ルヴァンカップ] 浦和 2-0 名古屋/ 2018年5月9日/埼玉スタジアム2002
「キャンプの頃とは別人です。それぐらい今は成長を実感できているので、継続させていきたいです」
ユニバーシアードを制した大学ナンバーワンGKとして2016年に専修大学から加入した福島春樹だが、同年7月に出場機会を求めてJ3のガイナーレ鳥取へレンタル移籍する。そこで試合経験を積んだもののシーズン終盤に右ヒザ前十字靭帯損傷と半月板損傷の重傷を負ってしまう。ケガを負いながら浦和に復帰した昨季は、多くの時間をリハビリに費やし、西川周作や榎本達也といった実力者から出場機会を掴めず、結局1試合も出場できなかった。
今季も開幕からチャンスは訪れずにいた。しかし、本人は内面から変化を遂げていた。
「昨年はネガティブな自分がいたんですけど、今年はポジティブにやろうと決めてここまで来た。これをシーズン通してやらないと意味がないので、続けていきます」
きっかけの一つが土田尚史GKコーチからの言葉だったという。
「尚史さんからは『いいプレーには理由がある。いいプレーをするためには、その準備があるからこそ』と言われてきました。本当にその通りで、今はいい準備ができているからこそいいプレーができていると思います。尚史さんには感謝をしています」
そして大槻毅前監督の初陣、4月4日のルヴァンカップのサンフレッチェ広島戦で、念願の浦和でのデビューを果たす(△0-0)。そこから同大会3試合連続完封だ。
5月9日のルヴァンカップ・名古屋グランパス戦(〇2-0)。相手の決定的なチャンスでも、身体を張った守備で冷静に阻止。完全にコースを読んで防いだ。
「落ち着くべき場面で、落ち着いてプレーできていると思います。周りが見えているからこそ、いい飛び出しができている。計画通りのプレーができました」
「取り組み方があるからこそ、試合に出られている。取り組み方を変えなければ、試合に出られることはなかったと思っています」
そして彼は言う。
ケガをしたことも、落ち込んだ時期も、すべての経験を、浦和のゴールを守るという仕事に向き合うために生かせていると。
「ケガもあってメンバーにさえ入れず、すごく悔しい想いをしてきたから、今がある。今季はその悔しさをバネにやってやろうという気持ちでやってきて、そういった経験があったから今があると思っています」
浦和には西川周作という大きな存在がいる。「負けるのだけは嫌い。絶対に負けないという気持ちで練習を積み重ねてきたことが今日のこの結果につながりました」という25歳の福島の突き上げは、間違いなくチームにとってプラス材料であり、西川をも刺激している。
「(3試合連続無失点だが?)連続というところには特に興味がなく、ただ目の前の試合で、ゼロ(無失点)にこだわった結果。その姿勢を続けていきたいです。(首位突破が期待されるルヴァンカップ・グループ最終節の広島戦での出場が予想されるが?)熱いゲームになると思うので、いい準備をしたい。この瞬間から切り替えて、次に向けて準備したいです」
もちろんレギュラーではない現状に満足していない。ただ、一歩ずつしっかり突き進む福島は、いろんな意味で、生まれ変わった浦和レッズを象徴する存在になってきているのは確かだ。チームとともに、どのように変化と進化を遂げるのか、見守っていきたい楽しみな一人だ。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI