鈴木優磨への肘打ちパトリック退場劇、今季Jリーグ判定基準の目安に「安全脅かす行為は排除」。一方、VAR運用には改めて課題も│G大阪1-3鹿島
G大阪のパトリック(左)と鹿島の鈴木優磨(右)。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA ・ 上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI
試合は鈴木のファウルで再開。一方、主審が“見えていなかった部分”も正確に伝えたうえでの最終決定だったのか。
[J1 1節] G大阪 1-3 鹿島/2022年2月19日14:00/パナソニックスタジアム
J1リーグ2022シーズン開幕のガンバ大阪対鹿島アントラーズ戦、鹿島が上田綺世の2ゴールと鈴木優磨のベルギーからの復帰初得点で、ガンバ大阪に3-1の勝利を収めた。
この試合、趨勢が決まってしまったのが鹿島が2-1とリードして迎えた38分、パトリックの鈴木優磨への報復行為による一発レッドカードだった。これでホームチームは数的不利になり、後半、上田にトドメの3点目を決められてしまった。
ミドルゾーンで競り合いが起き、そこでボールを収めたパトリックがドリブル突破を開始。そこへやや後方から鈴木優磨がスライディングタックルで止めに行く。これは鈴木のファウルなのだが……パトリックは足を掴んできた鈴木を振り払おうと、肘を相手の胸に突き出す。そのあと腕でも振り払う行為をする。
そこに駆け付けた主審は、パトリックにレッドカードを提示したのだ。
日本サッカー協会(JFA)審判委員会はこのほど、Jリーグ開幕を控え2022シーズンの「レフェリングスタンダード」を公開。ユーチューブの『JFA TV』でも紹介され、Jリーグの全クラブ・選手にも伝えられている。
その中で最も強調されているのが、「選手生命を脅かすようなプレー」についてだ。
そのような非常に危険な行為が昨季非常に目立ったということで、同委員会は次のように説明していた。
「選手の安全を脅かすプレーは今年度の大きなテーマだと考えています。選手生命を脅かすようなプレーや行為は、フィールド上から排除していく必要があります。審判員は正しく判定することが大切です」
今回のパトリックのように、報復の肘打ちは、確かに当たり所によっては選手生命を脅かす行為になる。つまり、当たった場所が顔かどうかは関係なく、報復行為には厳しい姿勢で臨む――という今季の判定基準の一つが示されたと言える(もちろん、その程度や範囲は、また難しいところではあるが)。
しかし、疑問が残る点もある。
主審がレッドカードを提示した対象行為が、パトリックの最初の鈴木の胸への肘打ちだったのか、それとも鈴木に当たっていない二度目の腕の振り払いを見てのものだったのか(パトリックはその前にも注意を受けていたので、総合的なものだったのか)。また、鈴木がパトリックの足を掴んでいたという、この出来事の発端を把握していたのか。そして鈴木の痛がる姿も影響したのか。
加えて、そのあたりを、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)は正確に主審に伝えられたのかも気になるところ。もちろん主審の判断が尊重されるべきであるが、“見えていなかった”部分をサポートし、そのうえでの最終決定でなければいけない。そのあたりは審判委員会でも整理したうえで検証してほしいところだ。
試合は鈴木のファウルにより、G大阪ボールで再開されている。
実際のところ、Jリーグでは近年、肘を使った行為が少なくなかった。そうしたプレーや行為、報復は絶対に許されない。その審判団のスタンスが打ち出された開幕ゲームになったと言えそうだ。
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[文:サカノワ編集グループ]