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【浦和】岩尾憲が語るACL制覇と大杉漣さん。日体大から湘南、水戸、徳島…35歳プロ13年目の初タイトル

浦和の岩尾憲。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

レッズでの自身と重ね合わせる。「徳島を大好きだった漣さんは、『バイプレーヤーとしてプライドを持ってやっている』とおっしゃられていました」

[ACL決勝 第2戦] 浦和 1-0 アル・ヒラル/ 2023年5月6日18:00/埼玉スタジアム ※2試合トータル 2-1で浦和の勝利

  AFCアジアチャンピオンズリーグ(ACL)決勝・第2戦、浦和レッズ(日本 / J1リーグ)がDFマリウス・ホイブラーテンのヘディングシュートからのオウンゴールで、アル・ヒラル(サウジアラビア1部)に1-0の勝利を収めた。浦和は2試合トータル2-1で、通算三度目のアジア制覇を果たした。

 岩尾憲(IWAO Ken)は4-2-3-1のボランチとしてアウェーでのファイナル第1戦に続きフル出場。180分間を戦い抜き、レッズをホームでタイトルへと導いた。

 日体大から2011年に湘南ベルマーレに加入し、プロキャリア13年目にして獲得した初の主要タイトルがこの「ACL」に。アジアの頂点に立った35歳の司令塔は、このタイトルの意味について問われると謙虚に語った。

「プロ入りした湘南ベルマーレには、本当に奇跡的に見つけていただいて、プロに適しているかどうかを含め長い時間をかけて決断してくれたので、この世界にすっと入ったわけではありませんでした。

 何かの大学の選抜や日本代表、もちろん年代別(日本代表)も含め入った経験が全くないので、ある意味、見定めるほうも難しかったはずです。

 そういうなかで評価してくれた人たちの顔に泥を塗ることはないようにというのが、自分の生き方として、一つあります」

 そして岩尾は徳島ヴォルティス時代に出会った、俳優だった故・大杉連さんがバイプレーヤーとしてプライドを持ってまっとうした、その人生に共鳴してきたと語った。

「華やではないかもしれませんが、こうした選手もいる、ということ。こうした選手にも意地はあります。プライド(誇り)を持っています。メインキャラクターではないですけれどね。

 徳島に大杉連さんという素晴らしい役者さんがいました。本当に徳島ヴォルティスを大好きだった漣さんは、『バイプレーヤーとしてプライドを持ってやっている』とおっしゃられていました。主演でなくても、バイプレーヤーとしてやれる仕事はたくさんあるし、プライドを持ってやっているという話を聞いたことがあります

 僕はここに来て、そういった立場に少し変えなければと感じてきました。ただ、そのいろんな出来事があって、今の自分を作ってくれています」

 キャプテンを務めた徳島ではJ1昇格に貢献した。ただ浦和では、より黒子に徹するように“こだわり”を持つようになったという。

「過去に自分と接してくれた、関わってくれた人たちがいて、今も支えてくれている人もいて、みんなに本当に感謝したいです。そういった方々に『おめでとうございます』と伝えたいです」

 プロフェッショナルの世界に入ってから、待っていた厳しい現実とも向き合い(出場機会を得られず水戸ホーリーホックへの期限付き移籍など経験)、それでも着々と確かな進化を遂げ続けてきた。「憲さん!」とカタール・ワールドカップ(W杯)日本代表DFでありキャプテンの酒井宏樹らは親しみを持って呼び、絶大の信頼を寄せる。

 みんなの期待に応え、それ以上の次元に向かうためにも。もっと上手くならなければいけない――。

 岩尾のその職人の域にある所作とこだわりは、アジアの頂点に立っても変わらない。

Posted by 塚越始

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