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【松本】流れ変えた渾身の激走。新人の下川陽太が掴んだ「プロ1勝目」

松本山雅の下川陽太。(C)SAKANOWA

久々の出場機会に応えて逆転勝利。「1.5人分走らなければ勝てなかった」

[J2 25節] 大宮 1-2 松本/2018年7月25日/NACK5スタジアム

 中美慶哉の退場により数的不利になり、先制点を与えてしまう――。松本山雅FCはアウェーでの大宮アルディージャ戦、絶対的不利な立場に追い込まれていた。

 しかし諦めたわけではない。松本の選手もスタッフも、むしろ勝機はあると踏んでいた。そこで後半から左ウイングバックに投入されたのが、新人の下川陽太だった。

 実に5節以来のリーグ戦での起用である。反町康治監督からの指示は、「相手は勝ったつもりでいるから、そのスキを突こう。2、3人抜いてゴールを決めてこい!」だった。

「我慢強く守備をしていれば自分たちの時間帯が必ず来る。そう信じて耐えていたところ、2点とも自分たちの掴んだ時間帯に決めることができました」

 下川はそのように振り返る。56分にCKからの流れで獲得した永井龍が決めて同点に。そして64分、カウンターから再び永井が決めて逆転に成功する。

 チーム2点目のシーン。前線までボールを持ち運んだ永井の行く手を、大宮のCB山越康平が阻んでいた。するとその左横を爆走し、永井を追い越していったのが下川だった。この動きに山越が一瞬つられた瞬間、マークの緩んだ永井が中央に折り返し、逆転のシュートを突き放したのだ。下川の追い越す動きがなければ決まっていなかったと言っていい、影のアシスト役をこなした。

 下川は「(永井から)パスが欲しかった気持ちもありましたが、龍くんが決めてくれて良かったです」と笑う。

「数的不利でもボールを持ったら特長を出そうと心に誓っていました。この逆転勝利で、首位を走るチームであることを示せたように思います」

 松本はこの25節まで6試合負けなし。その間、5勝1分というハイペースで勝点を積み重ねている。

 とはいえ、下川がリーグ戦のピッチに立ったのは、3月25日の5節・レノファ山口戦(△2-2)以来、実に4か月ぶりだった。昨季松本の特別指定選手としてすでにリーグ8試合に出場。プロとして臨んだ今季も、開幕スタメンの座を勝ち取り、順調にキャリアをスタートさせたはずだった。

 しかし5節までの4試合に先発しながら、チームは一度も勝利を奪えず……。そこから大卒ルーキーは出場機会を失ったのだ。

 主力選手のケガや移籍もあったなかで、このチャンスが巡ってきた。「数的不利であり、1.5人分は走らなければ勝てないと思っていました」という下川は持ち味の「走力+スタミナ」のタフさを発揮し、チームに還元してみせた。

「いつ試合に出ても行けるように、良い準備をしてきた。次はフル出場して結果を残したい気持ちも一段と強まりました。ゴールやアシストでも結果を残していきたいです」

 溌剌とした22歳がもがき苦しみながら、最後は笑って掴んだプロ1勝目。いろんな意味で、乗り越えてみせた。そしてチームも、下川自身も、2015年以来のJ1復帰に向けて、ここからさらに突き抜けていきたい。

取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI

Posted by 塚越始

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