エスパ髙橋の染野へのPKファウルは”誤審”? 元国際主審「イニシエイトの印象」、元日本代表「ファウルではないかな」
VARのオペレーションルーム(2018年5月の日本代表戦で公開された際のもの)。(C)SAKANOWA
「どちらとも言える」。DAZNのJリーグジャッジリプレイで。
[J1参入PO 決勝]東京V 1–1 清水/2023年12月2日14:00/国立競技場
※規定によりレギュラーシーズン上位の東京VがJ1昇格
J1参入プレーオフ決勝の90+3分、ペナルティエリア内にボールを持ち上がった染野唯月がやや後方からの高橋祐治のスライディングタックルを受け、これがファウルとなってPKを獲得し、染野のJ1昇格決定弾となった。このシーンが判定にまつわる疑問を検証するDAZNの『Jリーグジャッジリプレイ』で取り上げられ、「PKを与えた判定は正しかったのか?」について、元国際レフェリーの家本政明氏が持論を述べて詳しく解説した。
ゲストの元サッカー日本代表である藤本淳吾氏は「(高橋のタックルは)ボールに行っているようにも見えます。本当にPKなのかなという疑問はあります」、駒野友一氏は「(DFについて)ゴールに向かっていないドリブルなので、ここで無理して行くことはなかったのかなと思います。後半アディショナルタイム、ここでボールを取り切って、もう一度チームに勢いをつけて盛り上げたい気持ちはあったと思います」と高橋の気持ちを読み取り、ただ「ファウルではないのかな、というのはあります」と、同じく判定には疑問を呈した。
そのうえで家本氏は「どちらとも言えます。5:5、6:4、4:6……判断は分かれるシーン、難しい判断です」と、審判によって判定が変わってくるシチュエーションである可能性を示唆した。
「カメラのアングルによっても、ファウルっぽい映像もあれば、そうではないと感じるものもある。私はノットファウルのように感じます。(染野の)左足がポイント。高橋選手のタックルに対し、ブロックに行っていて、いわゆるイニシエイトの印象を持ちます。カメラのいくつかのアングルから見ると、イニシエイトかなと感じました」
そのように、こうして複数の映像を見て判断するのであれば、家本氏は染野がファウルをもらいに行っていて、PKを与えるべきではなかったのではないかという考えを示した。
染野の左足がブロックしようとやや高橋のほうに動いているのは、主審の角度からは確認できない。副審も角度的にチェックは難しかったと指摘している。
また世界中で統一されている現状のルールでは、VARが発動するのは「明らかな間違い」があった場合のみ。VARはあくまでも主審・副審ら現場の審判団の判定をアシスタントすることが役目である。
今回も池内明彦主審が、高橋のタックルが染野の左足に触れたあと、ボールに向かっている――そこを見逃してはいなかったため、VARはそれ以上の介入をしなかったと見られる(反則の有無については、全ての得点シーンをVARはチェックしている)。
また、日本でのVAR運用ルールでは、VARオペレーションルームにいるVARやAVARから、今回であれば「イニシエイトのように思える」など私見を伝えることは認められていないということだ。
また、コンテンツ内では、2019年9月のルヴァンカップ浦和レッズ-鹿島アントラーズ戦でのブエノのプレスを受けた杉本健勇が倒れたシーンが「今回と類似している」と例に挙げられた。しかし、SNS上では、高橋のタックルが結果的にはやや遅れて染野の左足に実際に触れていて、一方、杉本のケースは背中から寄せられたあと不自然に自ら倒れているので、比較対象にならないのではないかという指摘も少なからず見られた。
今回は家本氏と元日本代表の二人、三者いずれも”ノーファウル寄り”という考えを示した。清水サポーターからすると、もしも家本氏がこの試合の主審をしてくれていれば……と思ってしまうに違いない(ただ、あくまでもこうして試合後に全ての映像を確認したうえでの見解だとも強調している)。
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一方、東京Vサポーターからすると、「染野がファウルをもらいにいっている」と断定されるような形で、やややきもきする内容だったに違いない。イニシエイトのポイントは「ボールがプレーできる範囲にあるかどうか」。染野はボールに対しプレーしていて、相手に絶対に渡してなるものかと向かった行ったところでファウルをもらっているとも見える。決して騙すような意図はなかったのではないか、という視点にも触れてほしかったところだ。