【浦和】阿部勇樹さんスピーチ[全文]「仲間がミスをしたら、二度とそのミスが起きないようにサポートする。それがチームプレー」。サポーター問題を受けた公開シンポジウムで
阿部勇樹氏。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI
第三者委員会の報告会、「指定発言者」の立場から”本当に一つになった浦和を”と訴える。
昨年の天皇杯・名古屋グランパス戦で起きたサポーターの暴徒化問題を受けて、浦和レッズ第三者委員会の公開シンポジウムが2月16日、さいたま市内で開催された。そのなかで、2021年まで浦和に在籍し、現在、浦和ユースのコーチを務める阿部勇樹さんが「指定発言者」として登壇し、この問題を受けての自身の想い、そして浦和の対応についてスピーチを行った。
阿部さんのスピーチ全文は次の通り。
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2022年8月2日に起きた話を聞き、まず僕自身が思い出したのが2014年3月――横断幕の件により、無観客試合を行った時のことです。
誰もいないスタジアムでJリーグの試合をする。イメージはしていたけれど、実際に選手としてピッチに立つと、普段やるトレーニングマッチのような中で戦っている印象を持ちました。同時に改めて、常に多くのサポーターの方が一緒に戦ってくれている、その存在の大きさを実感した無観客試合でもありました。
今回、(浦和レッズに対し)天皇杯に出場できないという処分が下されました。昨年5月には三度目のACL優勝を勝ち取っていました。その結果もあり、サポーターの皆さんの期待も間違いなく大きかったと思います。
そのなかで敗戦を受け入れるのは難しかったはずです。しかし、そういった問題・事案が起きたことで、いろんなところに影響が及びました。チームは(罰金など)経済的にもダメージを受けました。
選手への影響として、やはり試合数が減ります。リーグ戦に集中して戦えばいいという見方もありますが、浦和レッズにはとても多くの選手がいます。若い選手――彼らの試合機会を考えると、試合が一つでも多くあったほうがいい。日程的にはキツくなるかもしれませんが、試合機会を確保するためには、非常に重要な大会でした。
それを考えると、選手にとってダメージは大きかったと思います。
そしてサポーターの皆さんにも、ダメージはあったと思います。日頃から愛する浦和レッズを応援できない、その機会が減ってしまう。他のチームは分かりませんが、皆さん浦和レッズのサポーターの方は、本当に浦和レッズが好きで、浦和のために一緒に戦って、応援してくれる方たちが非常に多く、クラブ全体を考えると、皆さんが受けたダメージも本当に大きなものだと感じます。
アカデミーの選手は、トップの試合を見る機会を失いました。アカデミーの選手からするとトップは憧れの存在です。また、ジュニア、ジュニアユースの選手からすると、ユースの選手が身近な憧れの存在かもしれないとも伝えています。
だから誰に見られてもおかしくない、普段の振る舞いや行動をしようという話をしています。
トップの選手も見られている。そして、町を歩いているサポーターも見られていまます。他のサポーターの方にも言えるかもしれません。そういったサッカーとは離れたところで、浦和レッズのエンブレムを胸につけて、このクラブを背負っているのだという自覚は持たなければいけません。
サポーターの皆さん、どうでしょうか? 例えば子供たちがスタジアムに行き、皆さんの素晴らしい応援、雰囲気、そういったものに憧れて、彼らのようになりたい、俺も浦和レッズを応援したいと思う子もきっと多いと思います。
そういった子供たちに、本当に、一緒にやろうよという姿を見せることができているのでしょうか? そういった姿をもちろんこれまでも見せて来てくれました。一方で、そういった声も聞きます。
だけど、一つのことでこうして失われてしまいます。皆さんが一生懸命積み上げてきたものが、一瞬で壊れてしまう。そうなるのは簡単なことです。
こうしたことが起きたあとが、やはり大事です。浦和レッズのクラブもそうです。こうなる前に、やれたことはあるはずです。これまで曖昧にして、はっきり「ノー」と言えなかった。クラブ側の責任でもあります。それは現役時代にも、そう感じていました。
しかしクラブのスタッフは、選手、サポーターを守り、いろんなところで力を貸して来てくれました。逆にもっと、サポーターの方が、不甲斐ない試合をすればその気持ちをぶつける、ため込んだものを発散させる機会が、もしかすると必要だったのかもしれません。
不甲斐ない試合をしたあと、(サポーターに囲まれるなど行く先を止められ)なかなか選手バスが出られないということもありました。多くの方が選手に意見をぶつけたいという思いを持っていたと思います。時間が経って、選手が降りて意見を聞く。バスを降りても、殴られることはないとは思っていました。サポーターの皆さんが、選手に何かを伝えたい。聞いてほしいという思いが、なかなか実現できなかった。次の日に移動などもあるなかではありました。ただ、お互いに解決策を探していけるようになっていけるはずだと思っています。
正直、この浦和レッズが盛り上がらないと、Jリーグは盛り上がらないと思っています。こうした事案で知ってもらうのではなくて、元々ある素晴らしいクラブ、皆さんの力を、もっと違った形でぶつけて、進んでいかなければいけないと思っています。
それには、全員が浦和レッズ全体、同じ仲間として自覚していくこと、地域に活力を与えて盛り上げていく。浦和を、埼玉を、Jリーグ、そして日本を盛り上げていく。そうやってみんなでアジアへ行くことができた。世界にも行けた。みんなが一つになったからこそ、そういったことを実現してきました。
僕は2021年に引退しました。そのあと浦和レッズが本当に一つになったら、どんな力を出してくれるのかという話をインタビューでもしてきました。
ACLを獲った時、一つになれたかなと思いました。でも本当の意味で、まだまだ一つになり切れていない部分があるのではないかなと思います。
サポーターの皆さんと作り上げてきた、この浦和レッズをさらに未来へつなげていかないといけない。次世代へ、しっかりつないでいくこと。それは僕たちの任務であり役割です。
皆さんのパワー、浦和レッズへの気持ちは理解しています。それを一つの方向へ向かってやっていくこと。それは難しいです。だって多くの人がいるから。
しかし、良くなるという目標を絶対に忘れないでほしい。それぞれの歩む道や過程は違っていても、目指す浦和レッズの姿は、一緒だと思っています。
これからはサポーターの方たちもクラブも、ダメなものはダメだと。仲間がミスをしたら、失敗したら、二度とそのミスが起きないようにサポートをしてあげる。それがチームプレーだと思います。
このクラブに関わる全ての方が一つになって、さらに大きくなる浦和レッズを見られることを、今は外から見ています。アカデミーの選手がそこへ加わっていけるように、サポートしていきたいと思っています。
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今後も浦和レッズへのサポートをよろしくお願いします。ありがとうございます。