待望リーグ初得点!ルーキー郷家友太が語るイニエスタのパスに込められたメッセージ
23節の湘南戦、リーグ初ゴールを決めた郷家友太(27番)をイニエスタ(8番)が出迎える。(C)SAKANOWA
「嬉しくって、走りすぎてしまった(笑)」
[J1 24節] 神戸 – 横浜FM/2018年8月26日18:00/ノエビアスタジアム神戸
ヴィッセル神戸の高卒ルーキーMF郷家友太が8月19日の23節・湘南ベルマーレ戦、サポーターにとっても、本人にとっても待望のリーグ戦初ゴールを決めた。
4-1-2-3の左ウイングで先発した古橋亨梧の負傷により(古橋本人は「多分大丈夫。大事を取りました」と言っていた)、郷家は後半開始からピッチに立った。その後は神戸が1-0とリードしながらも、選手交代でリフレッシュを図りながらプレッシングを強める湘南に苦しめられる。
その中で迎えた76分、カウンターで抜け出したルーカス・ポドルスキが右サイドをえぐって力強く持ち込む。そして左ウイングの郷家も呼応して、全力で駆け上がる。
「相手も少し疲れ始めていて、ルーカスがシュートを打つモーションに入ったので、(こぼれ球が)来なくてもいいから詰めようとゴール前へ入っていきました」
すると予感通り、ポドルスキの強烈なショットをGK秋元陽太が弾き、そこに郷家がまるで襲い掛かるようにボールをゴールネットに押し込んでみせた。
決して難しいゴールではなかった。ただ、気持ちの伝わる一撃だった。
郷家は突き抜けるように一目散にゴール裏に待つ神戸サポーターのもとへ駆け寄った。
「嬉しくて、走りすぎました(笑)」
歓喜に包まれた一撃。湘南に与えたダメージは大きく、神戸が勝利を確実にした一撃。結果、無失点のまま逃げ切り、内容をも伴った大きな勝点3を掴んだ。
郷家は左サイドでインサイドハーフのアンドレス・イニエスタとバランスを保ちつつ、何度か思い切ったアタックを見せた。青森山田高校から今季加入した19歳の新人もまた、イニエスタ加入の効果を強く感じ取っている一人だ。
「前期(イニエスタ加入前)に比べると、決定的なパスがたくさん出てきるようになりました。それに僕はイニエスタと(彼がデビューした)ベルマーレ戦(●0-3)、レイソル戦(〇1-0)で途中から一緒にプレーしてきましたが、一見、普通のパスなんですけど、なんだかとても前に向きやすいパスを出してくれていました。今日もそれを実感しながらできて、本当にすごく助かりました」
イニエスタとのプレーは5試合目だが、まとまった時間(5分以上)同じピッチに立ったのは、デビューした湘南戦以来だった。そのパスのメッセージを受け取るように、確かにこの日の郷家は”前向き”に、自信と勇気を持ってプレーをしているようだった。
「あえて弱いショートパス」の意図を汲み、前を向く。
郷家はイニエスタ加入前からのプレーの変化について語る。
「前期はちょっと安全なプレーばかりをしていました。後半戦に入り、少し気持ちを切り替えて臨むようにしています。だから前期だったら、もしかしたら、この日のゴールシーンでも、バテてあそこまで詰めていなかったかもしれません」
その積極性もあってか、神戸の27番からは新人らしからぬダイナミックさが感じられた。それをスケールの大きさ、と言うのかもしれない。
「気持ちが前期から切り替えられたからかもしれません。1年目で一番チーム内で若いですし、ガムシャラに走って、体を張って、ゴールを守って、チャンスに顔を出して、そこはまず誰にも負けずに心掛けてやっていきたいと思っています」
まだイニエスタとサッカーについて話をする機会はないそうだ。それでも「『前を向いてほしいパス』『もう一度リターンしてほしいパス』、いろいろなメッセージを感じ取っています」と言う。
イニエスタがパスに込めたメッセージ――。より具体的に、郷家は興味深い話をしてくれた。
「ショートパスで、あえて弱いパスを出してくれます。その届くまでに、僕が周りを見る時間を作ってくれるんです。そういったところでも、前を向け、というメッセージ感じます」
日本的に言えば一回り以上の15歳という年の差。文字通り百戦錬磨の経験を誇るイニエスタ獲得の狙い一つである、若き才能のポテンシャルを引き出すという効果がさっそく表れている。とはいえ、続く天皇杯4回戦のサガン鳥栖戦、郷家は先発起用されたものの0-3で敗れたのは苦い経験だ。
そんなトライ&エラーを繰り返し、神戸のユニフォームを着る者しか味わえない極上の成功体験を積んでいきたい。週末にはU-19アジア選手権を控えたユース日本代表のチームメイトでありライバルでもある久保建英、山田康太のいる横浜F・マリノスと対戦する。今まさに神戸で戦っているプライドを示す絶好のチャンスだ。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI