中村憲剛弾につなげた登里享平の”計算ずく”のプレス「僕はひょっこりで…」
川崎フロンターレの登里享平。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
あのジャンプは身長が低いけど割と自信があった。
[J1 24節] 川崎 1-0 仙台/2018年8月25日/等々力陸上競技場
まさに千両役者だ。川崎フロンターレの中村憲剛の決勝ゴールは圧巻だった。相手のクリアミスとはいえ、ボールの先に彼がいた、と言うより、まるでボールが彼のもとを選んで飛んで行ったようでさえあった。
55分、ベガルタ仙台GKのシュミット・ダニエルのゴールキックを、登里享平が相手選手にヘッド競り勝つと、ボールがフワッと浮いたままゴール前へ飛ぶ。これを大岩一貴がクリアしようとしたが、ボールは斜め後ろに飛んでしまい、そこに中村がいた。中村は冷静にGKの位置を見て、シュートを突き刺し、これが決勝弾となった。
ただ、中村は「普段やっているように、後ろからノボリ(登里享平)が追って来てくれていたから、(ゴールに)つなげられた」と言い、連動したプレッシングがもたらした、決して偶然ではない得点だったと説明していた。
その点について、登里もこのインターセプトは計算していたものだったと明かす。
「相手のウイング(シャドー)とウイングバックの両方を見れるポジショニングをとっていました。あとは自分の足の速さを考え、(ボールが飛んできたら)両方に行ける位置取りです。そこからGKが蹴るモーションに入ったときには、パスカットを狙って行きました」
「(DFとの競り合いについて)あのジャンプは、身長が低いですけど割と自信ありました。そのへんも頭に入れてポジションをとっていました」
ヘディングのカットは狙い通りだった。登里が普段から常にさまざまなシチュエーションを考え、想定しながら取り組んでいることが、今回一つ、結果をもたらした。
「相手のミスではありましたが、結果的に憲剛さんのBKBのパフォーマンスがTVに出ますからね。僕もパスを出したような形で映るはずだからちょっとラッキー。TVでは、ひょっこりしたいです(笑)」
バイク川崎バイクさん、ひょっこりはんさんがこの日の始球式のゲストなどを務めただけに、登里はゴールシーンの「ひょっこりはん」担当になれることを、むしろひょっこり喜んでいた。
ただ、連動したプレーからのゴールや2点目を奪えなかったことについては、「相手のラインを引っ張るようなポジショニングをとり続けて、背後、背中をしっかり突けるように、もっとアイデアを出して絡んでいきたい」と、課題を挙げることも忘れていなかった。
夏休み最後のホームゲーム、スタジアムを埋めた2万3816人の観衆の前でしっかり勝点3を積み上げた。川崎がここからさらに強くなっていきそうだ。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI