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【パリ五輪】阿部詩の慟哭、専門家の視点は?「内またを誘っていた」「一瞬のチャンスを相手が生かした」柔道五輪3連覇の野村忠宏氏ら解説

阿部詩の慟哭…。パリの観客からは健闘をたたえる「ウタコール」も贈られた。(Photo by Michael Reaves/Getty Images)

「まさに『瞬間の怖さ』」、『ミヤネ屋』で分析。

 パリ・オリンピック3日目の7月28日、柔道女子52キロ級では東京五輪から連覇を目指した日本代表の阿部詩が2回戦で、ウズベキスタン代表のディヨラ・ケルディヨロワに内またで優位に立ったものの谷落としで逆転の一本負けを喫した。敗者復活戦には回れず、メダル獲得はならなかった。

 試合を終えたあと阿部は泣き崩れ、高さのある畳から下りる力もなかった。コーチに抱きかかえられて畳から離れ、しかし24歳の前回金メダリストは立ち上がることができず……。パリで待っていたまさかの慟哭。その姿に、柔道の競技人口は日本の3倍と言われるフランスの観衆からは、「ウタ」コールと拍手でエールが贈られ、その健闘を称える光景が広がった。

 29日に放送された日本テレビ系列『ミヤネヤ』で、この阿部の敗戦について、オリンピック史上初の金メダリスト3連覇を成し遂げた野村宏忠氏、フランスで指導者を務めるバルセロナ五輪銀メダリストの溝口紀子さんが、それぞれ詳しく解説した。

 野村さんは、阿部の”一瞬の隙”という以上に、一瞬のチャンスをものにした相手をたたえた。

「試合全体を見ても詩選手がコントロールしていましたし、支配していました。最後は隙と言うより、相手がその一瞬のチャンスを確実に生かした。まさに『瞬間の怖さ』を目にしました」

 そして溝口さんは、それぞれの心理を含めて、次のように駆け引きを追った。

 ケルディヨロワは「技あり」を取られていたので、「一本」での逆転を狙っていた。そして阿部から再び「内また」を来るように誘ったという。

「体を密着させた際、阿部選手としては『さっきも内またが取れていた』と体が勝手に反応したと思います。これみよがしにケルディヨロワ選手が誘い、内またで来させた瞬間、谷落としに行きました。

 内または軸足一本になる瞬間なので、返されやすい。私もオリンピックの舞台でやられました。片足は投げることができる態勢ですが、逆に防御も弱くなってしまいます。ケルディヨロワ選手が、”誘った”上手さがありました」

 そのように互いの心理戦を含め、この勝負を分析していた。

 また最終的に、阿部を下したケルディヨロワが金メダルを獲得している。

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 阿部は東京五輪後に両肩を手術していた。溝口さんは「今回、満身創痍だったと聞いています。体をもう一度ケアすれば、十分にもう一度狙えると思います」と4年後のロサンゼルス五輪での再挑戦に期待していた。

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