【浦和-横浜FM】検証:サヴィオFK弾、なぜ名手のGK朴一圭が一歩も動けなかったのか? 要因は 遠野大弥のわずかだが大きかった「壁」の崩壊
横浜FMの朴一圭。写真:原田裕介/Photo by Yusuke HARADA
キックの瞬間、ボールへの視界を塞がれた。
[J1 11節] 浦和 3–1 横浜FM/2025年4月20日16:00/埼玉スタジアム
J1リーグ11節、スティーブ・ホーランド監督解任直後の一戦、横浜F・マリノスは浦和レッズとのアウェーゲーム、後半途中から試合を支配してビッグチャンスを作っていったものの追い付けず、試合終盤に3失点目を喫して1-3で敗れた。
浦和のマチェイ・スコルジャ監督は試合後の記者会見で「今日は幸運だったといえる場面がいくつかありました」と語っていた。
松原健の自陣ゴール前へのスローインから諏訪間幸成のミスキックで与えた渡邊凌磨の2失点目に目が行きがちではある。ただ、前半ラストプレー、マテウス・サヴィオが決めた直接フリーキックもまた、サヴィオの完全に裏をかいたキックとその精度とともに、「運」も関わったシーンと言えた。
サヴィオがボールを蹴った瞬間、横浜FMの名手・GK朴一圭は少し逆に反応。外を巻いてきたボールに、一歩も動けなかった。
朴が“任されていた”スペースのファーから決めらた。一体なぜか。
横浜FMは上を越えてくるキックに備え、ニアサイドに5枚の壁を立ち、下にも一人が寝て埋めていた。さらに朴からボールを隠すための浦和の2選手を挟んで、ファーには植中朝日、そして約一人分のスペースを開けて遠野大弥が立っていた。
朴はこの遠野と植中の間のスペースから、ボールが見えるようにしていたのだ。
本来であれば、遠野がこの外から巻いてくるシュートを防ぐ壁役だった。ところが、サヴィオが蹴る瞬間に遠野が動いて、内側にいた植中のほうへ寄ってしまった。
つまり、キックが蹴られるインパクトの瞬間、朴の視界を塞いでしまったのだ。加えて、遠野が内側へ動いたので、その方向に来る――と予想せざるを得なかった(反応してしまった、あるいは賭けるしかなかったとも捉えられる)。
遠野がそのまま朴に指示された通りの位置で「壁」になって立ったままでいれば、サヴィオのキックが当たるなど、防げた可能性が上がったシーンではあった。
一つひとつのプレーにこめられている“なぜ”。その探求にも時間を費やしてきたはずの横浜FMだけに、もったいない、わずかでありながら大きかった壁の崩壊だった。
“アタッキングフットボール”を支える大胆さとディテールへのこだわり。言い換えればチームの勝利のための献身であり、ベクトルをその一点に向けられるか。
悲願であるAFCアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)エリート制覇への重要なポイントになりそうだ。