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【日本代表】森保監督と日本サッカー協会、起用法を再考すべきでは。伊藤洋輝はミュラーと最後に戦えなかった│バイエルンで初のリーグ優勝

ブンデスリーガを制したバイエルンの伊藤洋輝(右)が、トーマス・ミュラー、キム・ミンジェと記念撮影。写真:ロイター/アフロ

冨安健洋とともに、メガクラブの二人が日本代表の活動後、長期離脱している状況を真摯に受け止めるべきだ。

[ドイツ・ブンデスリーガ 33節] バイエルン 2-0 ボルシアMG/2025年5月11日(現地10日)/アリアンツ・アレーナ

 ドイツ・ブンデスリーガ33節、前節2シーズンぶりのリーグ制覇を決めたFCバイエルン・ミュンヘンがボルシア・メンヒェングラートバッハに2-0の勝利を収め、ホーム最終戦で有終の美を飾った。試合後の優勝セレモニーでは、自身初タイトルを掴んだ日本代表DF伊藤洋輝もマイスターシャーレ(優勝皿)を掲げて、歓喜の輪に加わった。ブンデスリーガはあと1試合で全日程を終える。

 伊藤がキム・ミンジェ、そして今季限りでの退団が決まっているトーマス・ミュラーとともに記念撮影に収まる。素晴らしい光景だが、伊藤は現在中足骨を再び骨折したため離脱中である。今年中に復帰できるかどうかもまだ分からないと現地では報じられている。

 今季リーグ6試合・1得点、公式戦通算8試合出場。伊藤もバイエルンの2シーズンぶりの王座奪還のミッションに貢献した紛れもない一人だ。

 ただし日本代表の北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選3月シリーズ、2試合連続で先発出場し、そのあとドイツに戻った直後の試合で中足骨を再び骨折している。

 苦しんだシーズン最終盤、ミュラーとピッチで一緒に戦えなかった。それは本当に残念であり、悔やまれる。

 日本代表の3月シリーズ、そこで伊藤は復帰を果たした。すでに北中米ワールドカップ(W杯)を決めながらも、伊藤を2試合連続で先発させる必要があったのか。負傷明けの選手の起用法について、日本サッカー協会(JFA)、森保一監督が真剣に見つめるべき点になるだろう。

 ケガから復帰した伊藤の日本代表への合流前、バイエルンでの5試合の起用法は次の通りだった。

節 日時 対戦相手(スコア)出場時間
23節 2月24日 フランクフルト戦( 〇4-0) 63分
24節 3月1日   シュツットガルト戦(〇3-1)
3分
25節 3月8日   ボーフム戦(〇3-2)     76分
CL16強2 3月12日 レバークーゼン戦(〇2-1)21分
26節 3月15日 ウニオン・ベルリン戦(△ 1-1) 8分

 バイエルンのヴァンサン・コンパニ監督は連戦に加え守備陣にケガ人が相次いでいたなか、慎重に出場時間に気を配り、伊藤をチームに溶け込ませて結果を残していった。

 ところがそのあと日本代表で、伊藤は3月20日バーレーン戦(〇2-0)、3月25日サウジアラビア戦(△0-0)と、中4日で2試合に先発フル出場しているのだ。

 連戦でのフル出場。そのような“酷使”は所属先でも避けてきていた。結果的に、ドイツへ戻った直後、“3連戦目”になった3月29日のザンクト・パウリ戦で伊藤は再び骨折してしまった。

 例えば、ケガ明けの選手は、所属先での起用法を考慮し、直近の出場時間や起用法を越えないようにする。移動によるダメージ、コンディションへの影響も計り知れない。日本代表はそのあたり、ルールやケガの防止策を具体的に打ち出すべきではないだろうか。オーストリアでプレー経験のある宮本恒靖会長が、その知見を時代に合わせて活かせる時でもある。

 ちょうど1年前、すでに北中米W杯最終予選進出が決まっていたなかで、冨安健洋が2次予選に参加。オフが短くなる形になり、結果、アーセナルFCに合流したあとに負傷し、ほぼ1年を棒に振ることになった。

 そんなのは、いずれもこじつけではないか、偶然ではないか、という指摘もあるだろう。とはいえ、凄まじい重圧のなかメガクラブでプレーしている日本代表の二人が、ケガで出場できていない。日本代表での活動のあとコンディションを崩している。その事実には目を向けるべきだ。

「行けるか?」と森保監督から言われ、行けないと答える選手などいるはずがない。

 日本協会の山本昌邦ナショナルチームダイレクターは、FIFAランキングを一つでも上げるため、いわゆる消化試合など一つもなく、このあとも全試合全力で臨むと方針を示している。

 とはいえ、本気で日本代表がW杯での世界一を目指すのであれば、一体、何を優先すべきかは、よく考えるべきだろう。5月に欧州主要リーグが終わったあと、2-3週間ほどを挟みインターナショナルマッチウィークに突入する。すでにW杯出場を決めているなか、アウェーでのオーストラリア戦を経て、大阪でのインドネシア戦に臨む。

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 1年後のW杯にベストコンディションで臨む。そのためには、鋭気を養い所属先で高いパフォーマンスを見せ続けていく、切磋琢磨して進化を遂げていくことが優先されるべきだ。日本代表のマーケティングもあり、スター選手はできるだけ招集したい意向もきっとあるはずだ。しかし、日本代表の活動が影響する形で、新たな長期離脱者が出るのだけはもう見たくない。

Posted by 塚越始