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【指導者の視点】日本代表、ボール保持時の「決まりごと」がない。見えなかった攻撃の規則性

サウジアラビア戦後、茫然とする日本代表の選手たち。(C)JFA

数的優位を作り出す前提である、いるべきポジションにいたり、いなかったり。

[カタールW杯アジア最終予選 B組3節] サウジアラビア 1-0 日本/2021年10月7日(日本時間8日2:00)/キング・アブドゥッラー・スポーツシティ(ジッダ)

 日本代表がアウェーの地に乗り込んでのサウジアラビア代表戦、何度か決定機はあったものの攻撃の規則性が感じられず0-1で敗れた。

 それにしても疑問が生じる。日本代表のこのメンバーならば、もう少し主導権を握った戦い方ができるのではないか。

 ただ、そもそも「ボールを保持するためのオーガナイズ(どうやってフリーマンを作るか、どこから前進していくかなど)」が徹底されていない、浸透していないと感じる。

 まず前提として、自陣からのビルドアップでは、数的優位(相手FWの枚数+1枚)を作り出していくことになる。そして相手チームは、コンパクトな状態にするのが難しくなる。そこでスペースができ、なおかつ数的優位であるため「正しいポジショニング」を取れれば、フリーマンを見つけ、そこを使いながら前進して行ける。

「正しいポジショニング」とは、数的優位を作るためにボールホルダーをサポートする選手、スペースを作るためにわざと相手を引きつける選手など、チームで求められる役割に沿った位置に立つことを指す。

 そのうえでサウジアラビアの4-4-2システムを攻略するのであれば、次の3点が「決まりごと」になるはずだった。

1)日本は相手2トップに対し、GK + CB +ボランチで4対2の状況を作り、相手のファーストライン(2トップ)を越える

2)相手の最終ラインを押し下げるため、大迫勇也or鎌田大地、浅野拓磨が背後を狙い続ける

3)優位性を保ちながら進み、S B、遠藤航、南野拓実、大迫or鎌田がライン間を狙い、相手のM F(セカンドライン)の選手を牽制する

 このオーガナイズを前提に、あとは相手のプレッシングに応じてできたスペースを利用して攻めていく。

 実際には、もちろんここまで簡単にうまく行くわけではないが、「前提」を共有しておくことはとても重要である。その結果、判断に迷いが生じず、反射的に実行に移せる。

 サウジアラビア戦の日本の選手は、そうした「前提」の立ち位置にいる時もあれば、立っていない時もあり、規則性がほとんどなかった。

 そのため常にボールを受けたあと、考えながらプレーする場面が多かった。そこで一つひとつのプレーに時間がかかってしまっていた。

 相手陣内の崩しの場面も同様だ。

 ボールを保持すると逆に時間がかかり、決定機をなかなか作れなかった。

 選手の判断に基づいた戦い方が決して悪いわけではない。ただ現代サッカーの多くのチームはそうした「前提」を全員が共有し、そのうえで相手に応じた判断をしている。

 森保一監督のもと、日本代表に「決まりごと」がある程度定められるだけで、主導権をもった戦いができるようになるとは感じる。

 オーストラリア戦はすぐにやってくる(10月12日@埼玉スタジアム)。アジアのライバルに対し準備を周到に、これまでの鬱憤を晴らす内容と結果を期待したい。

【著者プロフィール】
佐川祐樹(さがわゆうき)
1992年4月25日生まれ。広島県出身。広島大学大学院時に指導者キャリアをスタート。広島皆実高校サッカー部コーチ、広島修道大学サッカー部監督を経て、2018〜2020シーズンの3年間、FC今治のU-14コーチを担当。元日本代表監督でFC今治オーナーの岡田武史さんから「OKADA Method」を学び、原理原則やプレーモデルを大切にする育成法を学ぶ。現在は、山口市役所で勤務しながら山口県のサッカーに携わっている。

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