【2018に懸ける】近藤直也が魂の一撃に込めた試行錯誤の「答え」
千葉の中心には、近藤がいた。写真:石田達也/(C)Tatsuya ISHIDA
全員でゴールを目指す「ハイライン&ハイプレス」の先に――。
ジェフユナイテッド市原・千葉のファンやサポーターの間で語り継がれる、記憶に刻まれるひとつのゴールが生まれた。2017年J2最終節の横浜FC戦、近藤直也が決めたヘディングによる渾身の一撃だ。
8位の千葉がJ1昇格プレーオフ圏の6位にジャンプアップするためには、勝利が必須で、他会場の結果次第という他力本願の状況だった。試合開始早々にオウンゴールで先制点を与えたものの、30分に町田也真人のゴールで追いつく。しかし、是が非でもほしい、あと1点が遠いまま時計は90分を回り、アディショナルタイムに突入する。
6連勝中だったが……ここですべての望みが絶たれてしまうのか。いや、いけるはずだ――。スタジアムを埋めた千葉サポーターの熱のこもった声援を受けて攻め続けるなか、90+2分、右CKのチャンスを掴む。右手を挙げて清武功暉が蹴り込んだボールがゴール前に飛ぶ。ゴール正面、ど真ん中を突き進んできたのが近藤だ。背番号3がジャンプヘッドで完璧なタイミングで合わせた一撃が、それまで立ち塞がってきたGK高丘陽平の壁をついに突き破った。
2-1の勝利。クラブ記録の7連勝を達成させ、松本、徳島を抜いて6位に食い込んだ。
リーグ終盤の取りこぼしが許されないなか、厳しい戦いに身を置くことでチームは成長した。スペインで実績を積み初来日したアルゼンチン人のフアン・エスナイデル監督のもと、1年をかけて『ハイライン&ハイプレス』による前線からのプレッシングとハードワークを浸透させてきた。
新たな試みをする改革には、痛みが伴った。シーズン序盤はハイランの裏を突かれた失点が目立った。指揮官と意見を交わして守備のバランスを模索したのがキャプテンでもある近藤直也だった。
「まずチームが目指すべきところをブレずに、そのうえで監督と話し合い微修正を重ねながら、僕たち選手間でもどうすべきかを考えて、落としどころを見つけていきました」
そう語る近藤があらゆる意見や考えを集約し、バランスを探った。
「『ラインを上げるべきところは上げ、下げるべきところは下げる』。そのメリハリをつけることを、終盤は全員で共有できるようになりました」
ラインコントロールで気を付けたのが、間延びせず全体の陣形のコンパクトさを維持することだ。目指すのは全員がゴールに向かう意識を持つこと――得点を奪うための‟攻撃的な守備”。最終ラインから声をかけて、最前線まで統括する。34歳のセンターバックは、決して目立たないもののその重要な仕事を日々続けた。
そんな頼れる男が、2017年シーズン最後に決めた通算4点目。真っ赤なキャプテンマークを巻いた左腕を広げて、普段はポーカーフェイスの男が、この時ばかりは全身で喜びを表現した。窮地に追い込まれたチームをまさに土壇場で救った。
(後編「近藤が挙げるJ1昇格へのポイント」に続く)
取材・文:石田達也
text by Tatsuya ISHIDA