【川崎】「俺が決めて勝つ」小林悠が辿り着いた境地、その先に待っていた日本一の嬉し涙
34節の大宮戦の試合終了直後、小林が喜ぶを噛み締める。(C)SAKANOWA
他チームからの大型オファーを断り、フロンターレに人生を懸けた。
「ゴールを決めることで、俺はチームに貢献する」
2017年、小林悠はそう覚悟を固めて臨んだ。13年から15年までの得点王で昨季も15ゴールを決めていた大久保嘉人がFC東京に移籍し、さらに小林にも大型のオファーが飛び込んできた。そのクラブで3年間プレーすれば、川崎での1年分を稼げるぐらいの大型オファーだった。
それでも小林は川崎残留を選んだ。そして、ドリブル、パス、シュートとあらゆるレベルが高い点が評価されてきたが、今季はオールラウンダーではなく、あくまで「スナイパー=ゴール」に固執した。昨季も大久保と同じ15点を決めていた。しかし、さらにゴールを決めることで、チームを勝利に導く――と。
最終節の大宮アルディージャ戦。小林はハットトリックを達成して通算23ゴールで得点王に輝き、リーグ初制覇に導いた。杉本健勇と鹿島アントラーズを、いずれも最後に「逆転」してみせた。
試合後、歓喜の涙を流す小林は声を震わせて言った。
「『俺が決めて勝つ』。それしか考えていなかった」
エゴイスティックと言われるかもしれない。しかし、大久保の奪っていたゴールを埋めるには、自分が昨季以上の得点を決めるのは必須だ、と自らに言い聞かせた。さらに、それを公言もした。言葉にするのは容易いが……しっかりと有言実行してみせたのだ。
鬼木達監督は今季の小林の活躍ぶりについて、「悠は最初の頃、難しかったと思いますが、自分の役割をよく理解しながら戦ってくれました。得点というものにこだわり、得点王と結果を残し、しかもチームを引っ張ってくれた。本当に感謝しています」と労っていた。
2017年のJリーグMVPを獲得した。優勝チームの主将かつ得点王の受賞は、2012年のサンフレッチェ広島が制覇したときの佐藤寿人以来だ。
「でも…やっぱり個人の成績よりも、チームでタイトルを勝ち取ったことが嬉しい」
小林はチームメイトやサポーターが支援してくれると信じて、ゴールを奪うことにこだわり、そして頂点に立った。チームの勝利のために、2018年もゴールへ向かう。
文:サカノワ編集グループ