【2018│新天地に懸ける】「博多の男」を貫くべきか…中村北斗は『二択』で故郷・長崎行きを決めた
中村北斗が故郷の長崎への移籍を決めた。(C)SAKANOWA
「俺はアビスパで現役を最後まで続けたい。その覚悟で帰ってきた」。葛藤するなか、故郷の長崎からオファーが届き――。
昨年ベンチ入りが続いたものの、なかなか出場機会を得られずにいたアビスパ福岡の中村北斗は、こう打ち明けた。
「それでも、俺はアビスパで現役を最後まで続けたい。その覚悟で帰ってきた。アビスパのことを本当に大切に思って、みんなと戦ってきたから」
理想は「博多の男」で現役を戦いきることだった。2004年に国見高校から福岡に加入し、J1昇格とJ2降格を経験。05年のワールドユース(現U-20ワールドカップ)・オランダ大会には不動の右ウイングバックとしてフル出場し、大ケガも乗り越えた。そしてチームが低迷するなか、移籍金を残すため08年に移籍を決断。FC東京、大宮とプレーしたあと、再び2014年に福岡へ復帰した。
そして16年の昇格プレーオフ決勝のセレッソ大阪戦、チームをJ1へと導く「サポーターの皆さんが取らせてくれた魂のゴール」(中村)を突き刺した。中村は福岡の伝説を作った。
それでも17年、駒野友一がレギュラーを獲得。中村のリーグ戦出場はわずか5試合にとどまった。無論、プロフェッショナルとして、ピッチに立てない状況に納得などしていなかった。
「この状況が続くようであれば、考えなければいけない」
昨シーズンのラスト、彼は言っていた。
「あと、あり得るならば、故郷の長崎ですかね……」
そのとき、彼が2018年の所属について、基本的には福岡でプレーするつもりでいるが、オファーがあれば長崎への移籍も検討してもいいか、という『二択』であることを示唆していた。そして結果的に、彼はV・ファーレン長崎を選んだ。実際、その他の選択肢は考えていなかったようだ。
来季J1に初めて昇格する長崎では、徳永悠平との元国見高コンビが両サイドバックを担うことも考えられる。中村は3バックと4バックに対応できるのも強みだ。高木琢也監督のもとであればプレッシングやハードワークを怠らない点が買われ、2列目(中盤)も担える。もちろん昨季J2で躍進を遂げた選手たちも粒ぞろいで、まずは32歳の中村も昨季のブランクの不安を打ち消し、チーム内のポジション争いに勝たなければならない。
ただ、アビスパ福岡の象徴にまでなった男だ。故郷の長崎で記憶に残る大仕事を必ずやしてくれるはず。それぐらい期待していい。その期待に応えてきたのが、中村北斗だ。
文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI