【なでしこ入替戦】激闘…誇りと覚悟と感謝が熱く交差した180分間
1部残留を決めた日体大FIELDS横浜。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
横浜ダービー! F日体大がニッパツに、「179分」の一撃で1部残留を果たす。
プレナスなでしこリーグ1部・2部入れ替え戦は、「179分」にドラマが起きる白熱の展開となった。
1部9位の日体大FIELDS横浜と2部2位のニッパツ横浜FCシーガルスの対戦は、F日体大がアウェーでの第1戦(12月8日)を2-1で勝利し、さらに第2戦(12月16日)でもリーグ戦で培った粘り強さを発揮して2-2のドローに持ち込んだ。結果、1勝1分でF日体大が来季の1部残留を決めた。
12月16日の第2戦、F日体大は第1戦の結果を受けて気持ちにやや余裕を持って、対するニッパツは複数ゴールが逆転には必須という難しい状況下で臨んだ。
前半は両者ともに長所を潰し合い、ラストパスがほとんど通ることなくスコアレスで折り返した。迎えた後半、試合は大きく動く。打って変わって撃ち合いの様相を呈した。
最初にゴールをこじ開けたのはゴールの欲しかったニッパツだった。53分に佐藤渚のクロスを中村みづきが体ごと押し込む。しかし、1-0では、総得点数で上回れず昇格できない。
そのあとの71分、ミスから李誠雅に同点ゴールを奪われる。しかし2分後、大滝麻未が渾身のゴールを叩き込んだのだ。
このゴールで再びニッパツがこの試合で2-1とリード。しかも2試合トータルスコアが3-3で並んだ。
このまま延長戦に突入かと思われた……。だが死闘に決着をつけたのは、F日体大のセットプレーだった。
試合終了間際の89分、キャプテンの嶋田千秋がゆっくりとCKのボールをセットする。一呼吸置いて、狙い澄ましたボールが蹴り出される。そして混戦からこぼれたボールを、平田ひかりが右足で振り抜く。2試合トータルでは179分目に突き刺さった、これが決着弾となった。
嶋田は「1部でやれる環境を残せてホッとしています」とホッと安堵した。
大学チームとして1部で戦ったこの1年間は、思うようにいかない試合も多かった。攻め上がるよりも、耐える時間のほうが長かった。3勝4分11敗で勝点13――。それでも勝点には表れない経験が、大一番で大いに発揮された。
耐えて耐えて掴んだ1部残留。来年はまた選手も入れ替わり、新たなチームで臨む。3年生以下の選手にとって、このシビアな入れ替え戦を戦った経験は生きるはずだ。
一方、昇格への執念を見せたニッパツの奮闘も賞賛に値する。
確実に1点ずつゴールを奪い、何度も劣勢を跳ね返した。
「最後のところでまだまだ甘さが残ったなという感じです……」
一時は勝ち越し弾を決めた大滝は、悔しさを噛み締めた。それでも最後まで粘りを見せたプレーは来季につながるはずだ。
両者ともに絶対に負けられない試合だった。入れ替え戦ならではの誇りと覚悟と感謝が熱く交差した180分間だった。
取材・文:早草紀子
text by Noriko HAYAKUSA