世界一のDF岩清水梓になでしこ特別賞。新たな夢「いつか一緒に」
なでしこリーグの特別賞を受賞した日テレ・ベレーザの岩清水梓。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
13年連続ベストイレブン受賞。出産後の復帰を誓う。
プレナスなでしこリーグの表彰式が11月4日に都内で行われ、ベストイレブンには優勝した日テレ・ベレーザから最多7人が選ばれ、最優秀選手賞には田中美南が2年連続、2度目の受賞を果たした。通算20ゴールを決めた田中は4年連続得点王にも輝いた。
この表彰式のなかで、リーグが粋な計らいを見せたのが、岩清水梓(日テレ・ベレーザ)への特別賞の授与だった。
2010年のドイツ女子ワールドカップ(W杯)優勝、2012年のロンドンオリンピック銀メダル獲得と、世界屈指のストライカーを封じてきたセンターバックは、リーグ記録である13年連続でのベストイレブン受賞を果たした。その偉業をたたえて、特別賞が贈られたのだ。
13年連続ベストイレブン――。ケガなどによる長期離脱をすることなく、リーグトップのパフォーマンスを発揮し続けてきた。
サプライズの表彰に、岩清水は壇上に向かうレッドカーペットを歩く間、早くもその目からは涙が溢れていた。
10月に結婚と妊娠を発表した。
そこからは苦しみながら逆転優勝を成し遂げるチームメイトをピッチの外から見守ってきた。「イワシさんの分まで」「イワシさんが安心できるように」――。
岩清水の背中を見てきた若い選手たちは口々にそう語っていた。
そんな後輩たちを頼もしく思ってきた。一方、彼女自身はシーズン途中で戦線離脱した自身の責任も痛感していた。
そんな岩清水のさまざまな想いも受け止めていたベレーザの選手たちから、温かい拍手が送られた。そんなチームメイトの笑顔も、彼女の心を大きく揺さぶった。
33歳という年齢を考えると「引退」の2文字が頭をチラついたことも理解できる。それでも母から「やってみればいい。ダメだったらダメだったで、『すみませんでした』でいい」と背中を押されたという。
岩清水は来シーズン中の復帰を目指す。ただ、彼女を待つのは、“日本一”のチームメイトであり、母としての日々でもある。若手が台頭するなか、トップリーグ所属20年目になる彼女は「手強いですよ(笑)」と、まだまだ“イワシ離れ”をさせるつもりはない。
岩清水は、ささやかだが大きな夢を抱く。
「ラグビーW杯の選手も試合後にやっていましたが、私は優勝セレモニーで(子供と)一緒に祝えたら……嬉しいですね」
親子で優勝カップを掲げる――。ここから再びアスリートとして復帰するまでの道のりはまだ想像できず、何が待ち受けているのかも分からない。それでも”母は強し”と言わんばかりのパワーの増したイワシならば、再び第一線に戻って来ることができるに違いない。そしてそれが、女性アスリートの新たな道筋にもなっていくはずだ。
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[取材・文:早草紀子]