×

【アルガルベの屈辱②】宇津木瑠美が”これでいいんだ”と示した意地。隅田凛や清水梨紗らも成長を感じさせた

円陣を組むなでしこジャパン。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

次はW杯アジア予選。攻撃陣の個と個をいかに結び付けるかが最大の課題だ。

 なでしこジャパン(日本女子代表)は2月28日から3月7日まで開催された12か国が集うアルガルベカップ(ポルトガル)を、2勝2敗の6位で終えた。そして19日のメンバー発表を経て、女子ワールドカップ・フランス大会のアジア大会へと臨む。

 オランダ戦での「6失点」からどのように立ち直り、そして課題を見出したのか――検証レポート「アルガルベの屈辱」の後編を届ける。

――・――・――・――・――

 選手ミーティングを経て臨んだアルガルベカップ・グループステージ第2戦のアイスランド戦。高倉麻子監督のイメージを選手たちがアレンジしたカラーは、”相手が嫌がる位置にポジションを取り、粘り強い守備から攻撃へつなげる”というものだった。

 特にロスタイムに生まれた宇津木瑠美(シアトル)の両脇を相手DFに挟まれながらもヘディングで押し込んだゴールには、彼女の意地を見た。「これでいいんだ」という自信を選手たち自身に抱かせるために、この試合は勝利で終えなければならない。そういったチームを支えてきた一人者としての意地だった。

 決して美しいゴールではなかった。しかしどんなに美しく崩しても決まらないシュートより、この泥臭いゴールは尊かった。宇津木は言った。

「これまでもこうして勝ってきた試合は本当に多い。1点は1点。こういう気持ちを選手が忘れてしまうとゴールは遠くなる」

 ベテランが示した“勝負どころを見極める目”。理想の形にこだわり過ぎる傾向のあった若手たちにも、時にそれが大事になるというメッセージは届いたはずだ。

 とはいえ、初戦で突き付けられた脆さを改善させていったものの、カナダとの5・6位決定戦では0-2の完封負けを喫した。失点は自陣でハンドか? と足が止まったところを決められ、つなぎでの判断ミスから追加点を奪われた。いずれも防げた失点と言えた。

 むしろ攻撃面は形を作れず、かなり深刻に見えた。カナダの守備力が高かったとはいえ、フィニッシュにさえなかなか持ち込めなかった。芝の状態が悪かったことはパスを大切につなぐ日本に影響したが、ゴール前での脅威を与える縦パスがまったく入らず、ゴールの香りは嗅ぎ取れなかった。

 そんななか成長を感じさせた選手がいた。今大会ボランチで最も長くプレーした隅田凛(ベレーザ)、カットインから幾度となくチャンスを作った中島依美(INAC)はその筆頭に挙げられる。また新戦力として右サイドバックで起用された清水梨紗(ベレーザ)も持ち前のオーバーラップから好機を生み出した。

アルガルベカップ、ボランチで最も長くプレーした隅田凛。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

 FIFA女子ワールドカップ・フランス大会(来年開催)予選を兼ねた女子アジアカップ・ヨルダン大会は4月に開幕する。アルガルベカップで対戦した国々とは対照的に、今度は戦い方を知り尽くしている相手ばかりだ。

 確実に“日本封じ”をしてくる相手を上回れるのか。守備は改善できているだけに、次に求められるのはゴール(特に先制点)をもぎ取る力。中心選手の自覚が芽生える岩渕真奈(INAC)、フィニッシュワークに定評ある横山久美(フランクフルト)、変化に富んだパスを織り交ぜながら攻撃に加われる長谷川唯(ベレーザ)ら、それぞれの調子は良い。その個性をいかに組み合わせ、「なでしこの攻撃力」とするのかが課題だ。

 自由に動くだけが“自由な攻撃”ではないはず。互いを活かすコミュニケーションや連動性が加わってこそ、その”自由”は脅威を与える。時間はあまりない。ただ守備を固める相手に、攻撃陣にはそういった個と個から生まれる相手の想像を超えるようなアイデアが必要とされる。

(前編はこちら)

※日本女子代表は4月、来年の女子ワールドカップ・フランス大会のアジア予選(女子アジアカップ・ヨルダン大会)に臨む。

取材・文:早草紀子
text by Noriko HAYAKUSA

Posted by 早草紀子

Ads

Ads