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ボールを先に走らせる。宇津木留美がフィードに込めたメッセージ。ベレーザ、皇后杯戴冠へあと1勝

日テレ・ベレーザ宇津木留美が躍動!写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

1月28日のファイナル、リーグ首位のINACに挑む――。

 [皇后杯 決勝] 日テレ・東京Vベレーザ – INAC神戸/2023年1月28日15:00/ヨドコウ桜スタジアム

 1月22日に行われた皇后杯準決勝、日テレ・東京ヴェルディベレーザが3-1でアルビレックス新潟レディースを下して2大会ぶりに決勝進出を果たした。

 前々回まで皇后杯4連覇の強さを誇ったベレーザだが、WEリーグ元年の昨シーズンは無冠に終わった。現在もなでしこジャパンに多くの選手を送り出しているが、欲しいのはタイトルだ。

 2シーズン目のWEリーグでは、7試合を終えて暫定4位。高いスキルとポゼッション率で主導権を握っているが、目指している絶対的な強さを示せずにいる。

 一方、皇后杯では少し様子が異なり好調だ。前半から勝負どころをしっかり決め切り、勝ち上がってきた。新潟戦では開始直後3分に藤野あおばが2人をブチ抜いて豪快に先制弾を叩き込み、9分後には植木理子が冷静なコントロールからゴールを攻略した。

 そのベレーザの中で目を引いたのが、左サイドから完璧なロングフィードで2点目をアシストした宇津木留美だった。言わずと知れた世界一の景色(2011年の女子ワールドカップ優勝メンバー)を知る、貴重な現役アスリートの一人だ。

 これまで後半に投入されることが多かった彼女だが、WEリーグ中断前からスタメンの座を掴んだ。そして皇后杯では、その効果が表れてきている。

 植木のゴールを導いたロングフィードは、動き出しに合わせたというより、“走らせた”と表現すべきボールだった。チーム全体のスキルが長けているがために足元のプレーが目立ったなか、ゴールから逆算した、宇津木の強烈なメッセージが込められたロングフィードだった。

「リーグ戦ではどうしても自分たちのやりたい形から入り、そこにこだわるあまりゴールが遠かったりしましたが、皇后杯は一発勝負。最初に点をどう獲るかを逆算する。点を獲ってから、自分たちの形っていうのをやりたいようにやったらいいじゃない! っていう気持ちはありました」

 植木の持ち味の一つが裏への抜け出し。彼女の意図したポジショニングからボールを呼び込むことが多いが、ポテンシャルを最大限に活かすためには、ボールが“先行”すべきだと宇津木は言う。

「(植木)理子に合わせる場合、オフサイドになるリスクもあるので、ギリギリのところで、先にボールを走らせないとせっかくのチャンスも生かせない。足元ばかりではなく、タテを狙って2次、3次攻撃につなげる道筋も絶対に必要なんです」

 彼女の考えの根底には揺るぎない勝者のメンタリティがある。スタイルではなく、結果(勝利)を優先すべき時間帯があり、その舵をどのタイミングで切るべきか。宇津木はその経験から、1本のパスに今こそ行けるとメッセージを込めた。

「イワシと私が並んだ場合、そこがチームのバロメーター的なものになっています。最終ラインのドタバタが少ないと、セカンドボールを拾いやすくなる。そこからどう組み立てるのか。シンプルに狙える時は、キック1本でこれだけ状況が変わるんだということを、もっと出していきたいです。それを感じてくれる選手が多くなってきました」

 そして決勝の対戦相手は、リーグ首位のINACレオネッサ神戸に決まった。

 リーグ戦は2-2のドローと互角に終わっている。強いベレーザの復権をかけて、1月28日のファイナルに臨む。

日テレ・ベレーザ、準決勝・新潟L戦は快勝!写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
3大会ぶりの戴冠へ、日テレ・ベレーザが決勝へ進出。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

Posted by 早草紀子

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