激動の女子サッカー界。ベレーザ菅野奏音が支えるWEリーグ初優勝への道のり
日テレ・東京Vベレーザの菅野奏音。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
首位INAC神戸と1ポイント差に。「若い選手たちは本当に上手い。でも…」
ウィンターブレイク明けのWEリーグ16節、日テレ・東京ヴェルディベレーザはホームでセレッソ大阪ヤンマーレディースに2-1の勝利を収めて勝点35に伸ばし、首位INAC神戸レオネッサと1ポイント差に迫った。
試合は終始ベレーザペースで進み、29分に樋渡百花のゴールで先制。61分には眞城美春が追加点を奪う。終盤に1点を返されたものの1点差で逃げ切った。
ただボランチの菅野奏音の表情は試合後、少し曇っていた。
「勝点3を獲れて嬉しいですが、無失点で終われなかったこと、自分たちのペースで進めたなかで前半のうちに追加点を獲れなかったこと……課題が残りました」
今季のベレーザは、中盤を担っていた木下桃香が1月に引退を発表し、戦力的に大きな影響を受けた。一方、育成組織から昇格した若手が多く、切磋琢磨し合いながら成長を遂げている。
この激動の転換期をしっかりと支えしている一人が菅野だ。
これまでは周りに引き上げられてきたという生え抜きの24歳は、チームを牽引する立場になった。彼女が多くボールに関わることでベレーザはリズムに乗る。
ただ、なかなかゴールに結実しない。菅野は流れを変えようと、サイドチェンジでの揺さぶり、そこでクサビのパスを放っていった。決勝点は菅野から山本柚月、眞城とつなぎ、鮮やかなミドルシュートが決まった。
また、C大阪の前線には今シーズン二度のハットトリックを達成し、現在ゴールランキング1位の矢形海優がいた。彼女のカウンターを警戒しながら勝利につなげたことも自信につながった。
終盤に追い付かれたノジマステラ神奈川相模原戦(13節△2-2)がきっかけになり松田岳夫監督は「危機感を持って練習に取り組んだくれた」と言う。
菅原は気を引き締める。
「ボランチとしてバランスを取るだけでなく、思い切って前に出ることもしないといけない。若い選手たちは本当に上手い。でも勝負を決める強さはまだまだ。自由なプレーの中に“強さ”を一人ひとりが見せていかないとタイトルは獲れない。そこをやりきるのが、自分の役目だと思っています」
ここからINAC神戸、浦和Lとの直接対決がある。菅野をはじめとした緑の伝統と誇りを継承してきた選手たちを中心に、ベレーザがこの混沌を突き抜けた時、WEリーグでは初、なでしこリーグを制した2019年以来5年ぶりとなる、頂に立つ“女王”の澄み切った風景は待っているはずだ。
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取材・写真/早草紀子
text and photos by Noriko HAYAKUSA