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【なでしこ】田中美南がブラジル戦“幻のゴール”に「それでも通用する、という感覚を得られた」

田中美南がブラジルから先制! かと思われたが…。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

倒れなくなったストライカー、「今日は二回くらい倒れずにプレーし続けることを意識して、それができました」。

[親善試合] ブラジル女子代表 3-1 日本女子代表/2025年5月31日(現地30日)/ネオ・キミカ・アレーナ(ブラジル)

 なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)は現地5月30日、ブラジル女子代表との親善試合で、清家貴子が1点を返したものの1-3で敗れた。

 ブラジル女子代表の第1戦、11分に田中美南がロングシュートを決めて、先制した――はずだった。しかし、VARの介入によりプレーを遡り、その起点となった自陣ペナルティエリアでの南萌華のタックルがファウルと判定され、一転、「得点取り消し→ブラジルにPK」という“逆転判定”が下された。

 ファインゴールは、幻となった。それでも田中は強豪相手にやれるという確かな感触を得られたという。

 相手の裏を取る田中のランニングを察知した藤野あおばがフィードを放つ。田中は巧みなタッチでボールをコントロールし、駆け出してくるGKの動きを見極めて、グランダーのロングシュートをゴールに突き刺した。

 田中の十八番とも言える相手の裏を突き続けるプレーが結実した(はずだった)。ニルス・ニールセン監督のもと改めて輝きを放つストライカーは、「通用する、っていう感覚は得られました」と、取り消されたもののあの幻のゴールをプラスに受け止めていた。

 また、ポストプレーが通用したことも収穫に挙げた。

 この日、前線のターゲットは田中一人だけで、ブラジルの厳しいプレスにあい続けたが、確実に起点となっていった。ただ、そこに絡んでくる2列目やボランチがいなかったため、「ボランチを上手く使えていなかった」とも語っていた。

 また以前のようにデュエルの競り合いで倒れる回数が減り、むしろ“倒れそうだ”というところで粘り、相手をかわしてチャンスにつなげている。「今日は二回くらい倒れずにプレーし続けることを意識して、それができました」と、これもまた自信にしていた。

「個人的にはスコアほどの差は感じていません。フィジカルの問題ではなく、予測・判断力の問題。中途半端になっていたところを中2日で整理したいです。2戦目は同じ結果にはならないですよ」

 2連敗はしない。田中はそう意欲を口にした。

 バイエル・レバークーゼン(ドイツ)、ユタ・ロイヤルズFC(アメリカ)でプレーしてきて、思考も変化していったという。

「日本でプレーしていた時、海外の選手にフィジカル的な差を感じたら自分の中で感覚的にやめていた部分、チャレンジしなかった部分があったんです。まだそこを突き抜けきれてはいないけれど、ちょっと突っつくくらいにはなってきていると思います」

 確かに相手を背負うと簡単に転がされていた田中の姿は、ほとんど見ることがなくなった。身体の使い方、相手のパワーのいなし方……強靭な選手たちと闘っていくスタイルにすっかり切り替わった。

「ファウルを受けながらでも前に運ぶ力がついてきている。それは実感できてきています」

 なでしこジャパンとブラジルの2連戦は日本時間6月3日8時から行われる。

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取材・写真/早草紀子
text and photos by Noriko HAYAKUSA

Posted by 早草紀子