実にホーム8か月ぶり勝利!職人肌のMF宮本航汰がFC岐阜に勢いをもたらす

FC岐阜の宮本航汰(9節・徳島戦より)写真:後藤勝/(C)Masaru GOTO

今季全試合で先発出場中。大木武監督は「100近くを試合で出せるタイプ」と重宝。

 FC岐阜が5月6日のJ2・13節の松本山雅FC戦を2-0で制し、ホーム長良川では実に昨年9月5日以来、実に8か月ぶりのリーグ戦の勝利を収めた。

 4-3-3の中盤3枚のうち庄司悦大とシシーニョが退団した今季、開幕から全試合に出場しているのが今季清水エスパルスから期限付きで加入(昨季はV・ファーレン長崎でプレー)した宮本航汰だ。

 大木武監督は彼を軸に据えている。ただ昨季のアンカーでありキャプテンを務めた庄司悦大、大木武監督がかつて率いたヴァンフォーレ甲府の林健太郎のように司令塔然としたところはなく、最大の売りは豊富な運動量だ。

 9節・徳島ヴォルティス戦後、スーパーなものは持っていないものの、いろいろなことができる宮本を、どのような選手に育てていきたいか訊ねると、大木監督は時間をかけて語ってくれた。宮本のように均質的に高い能力を持つ選手は日本に多いが、自分のなすべきことを自覚し、実践できるところが良さ――だと。

「90分動き続けます、守備においても、攻撃においても」

「100がどこかは人によって異なりますけれども、30や40しか出せない選手もいます。それを彼は100近くまでゲームで出せる。そういうタイプの選手です」

 宮本は8節の東京ヴェルディ戦で75分に途中交代している。他の試合はすべてフル出場しているだけに、宮本はその一戦で何が足りなかったかを自問自答していた。

「(持っているものを100近く出せると監督は言っているが?)それしかやれない。出し切らないと、とは毎試合思っています。交代したとき、『出し切っていないな』と感じました。どうせ交代するなら、足を攣ったりするなど、全部出し切ったうえでないと。そこが自分のベース」

 21歳の宮本は決して飛び抜けたスピードがあるわけではないが、その判断力には定評がある。その要因について、彼は次のように自己分析していた。

「僕はどちらかといえば足が遅いほう。読みと言ったら正しいのか、例えば相手のボールの持ち方やプレスを掛けに来るタイミングを察して、なるべく早く(プレッシャーに行こう)いこうとしています。ビルドアップでは、福ちゃん(福村貴幸)の顔を上げるタイミングを見て、次のプレーを意識して、サポートを多くしています」

 その備えとして、宮本は試合の前日に相手チームの映像を観る。それもかなり精密に。相手の持ち方を、脳裏に焼き付けておくのだ。

「イメージと実際の試合では距離感は全然違うかもしれませんが、良いイメージを持っておくと、あ、その通りだと自信になります。(刷り込んでおくと)ダメだったときもすぐ(修正して)対応できます」

 刷り込み、実践し、修正する。職人のような実直さと熱心さ、そして勤勉さが、誰にもない強力な特長となっている。

移籍1年目の今季、開幕から全試合に出場中。写真:後藤勝/(C)Masaru GOTO

 大木監督は彼が成長するためのポイントを挙げる。

「だから、彼はこのままやる。それから、その中の一つひとつのクオリティを上げていく。それが一番の早道だと思いますね」

 その姿勢が一つ目に見える形として結実したのが12節のロアッソ熊本戦だった。

 48分、相手の動きを読んでインターセプトすると、そのまま一気にゴールを陥れ、これが決勝点となった。この日の勝利が、翌節の好調だった松本を打ち破る今季ホーム初勝利につながる勢いを生んだのは間違いない。

 チームの流れを変えた、価値ある一撃だった。徹底的に自身の仕事と向き合う職人のような宮本の鍛錬の道と進化はこれからも続く。

取材・文:後藤勝
text by Masaru GOTO

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