【浦和】世代交代は進むのか。阿部勇樹と柴戸海の序列に生じた変化
浦和レッズの阿部勇樹(左)と柴戸海。写真:徳原隆元 (C)SAKANOWA
逆転勝利を収めた鹿島アントラーズ戦。今季初めて柴戸が先に投入される。
[J1 30節] 浦和 3-1 鹿島/2018年10月20日/埼玉スタジアム2002
浦和レッズが鹿島アントラーズの会心の逆転勝利を収めた一戦、浦和の選手交代で一つの変化が起きた。
途中出場した、阿部勇樹と柴戸海だ。
浦和の最近のリーグ5試合は4勝1分。直近4試合で、二人はすべて途中出場している(阿部は先発2試合を含め16試合連続出場中)。
阿部はチームにアクシデントがない限り、試合展開にもよるものの、残り20分から30分と比較的早い時間帯に投入されることが多かった。チームに安定感をもたらすことで推進力を強めようというとき、試合を落ち着かせるときなど、いずれも重宝されてきた。
一方、9月23日の27節・ヴィッセル神戸戦(〇4-0)で鋭いプレッシングから再三にわたってボールを奪い、浦和サポーターにも衝撃をもたらした柴戸海は、残り9分、5分、6分と試合を締める最後のカードとして投入されてきた。
大きくタイプ分けをすれば同じ「守備メインのボランチ」に括られる二人だが、特長はやや異なる。そして今回の鹿島戦、柴戸が1枚目のカードで今季初めて登場し、18分間プレーした。そのあとに阿部が入り、ピッチに立ったのは12分間だった(さらに残り5分でアンドリュー・ナバウトが埼スタ復帰)。
ようするに、初めて柴戸が阿部よりも先に投入されたのだ。最終ラインや中盤の深い位置からも精度の高いキックでゴールを奪える鹿島に対し、出足も鋭くバイタリティもある柴戸が勝点3を掴むためには、より効果的だと、オズワルド・オリヴェイラ監督も判断したのだ。
それは何より柴戸の起用法の幅が広がっていることを意味していた。ひとつの選手交代ではあるが、それは特筆すべきことだったかもしれない。
もちろん、今後も試合状況に応じて、阿部が先に投入されるケースはあるに違いない。しっかり後方からビルドアップしたいとき、バタバタした展開を沈めるときなどは、阿部の力が必要とされる。一方、柴戸は相手の起点となりうる芽を潰したいとき、プレスを強めたいとき、阿部と同様に守備に厚みを加えたときなど……最近の3勝1分に貢献しており、起用できるシチュエーションが増えてきている。とはいえ、二人も控えには甘んじたくないはず。現状には満足していないだろう。
戦力的に見て、ダイナミックさやアグレッシブさもある柴戸が複数のタスクをこなせるようになってきたことで、選択肢の幅を広めている。これが世代交代なのだろうか。
とはいえ阿部の経験値はやはりずば抜けており、オズワルド・オリヴェイラ監督も「阿部は大切に起用していく」と語っている。9月30日の28節柏戦(〇3-2)、点の取り合いになるなか、決勝ゴールの起点になったのは阿部だった。やはり頼れる男であると、改めて実証してみせた。
柴戸は中盤の守備で守備で計算が立ってきた。これからはゴール(フィニッシュ)にいかに絡むかも、テーマになってきそうだ。
文:サカノワ編集グループ