「W杯の熱が冷めてしまう」長友佑都が鳴らした警鐘と昂る期待
ウルグアイ戦でフル出場した日本代表の長友佑都。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
南野、中島、堂安の活躍を喜ぶと同時に、過去のW杯で感じた虚無感も。
森保一監督の下で船出をした日本代表が、キリンチャレンジカップの9・10月シリーズで、これまで3連勝を果たした。4-3の勝利を収めた10月16日のウルグアイ戦の試合後、4-2-3-1の左サイドバックでフル出場した長友佑都は、若手選手たちの活躍ぶりを称えた。同時にワールドカップ(W杯)の盛り上がりを当たり前だと思ってはいけないと警鐘も鳴らす。彼はW杯という”祭り”のあとだからこそ、いかに代表への関心を引き出すかを考えていた。
南野拓実、中島翔哉、堂安律。彼らのウルグアイ戦での躍動感溢れるプレーは、最終ラインから見ていても心を動かされるものがあったという。長友は嬉しそうに語った。
「僕も意識的に、彼らにどれだけ気持ちよくプレーさせるか、負担なくプレーさせるかを考えていました。(左サイドのMF中島)翔哉ともあまりプレーしたことがなかったので、まず彼らが生き生きとしている姿を引き出したかった。彼が楽しんでくれたのならば、僕の任務も達成できたのかなと思います」
もちろん連係面など詰めていく部分はある。それでも「フルで戦ったのは1試合(ウルグアイ戦)だけ。もっともっと良くなると確信を持てる。これからも楽しみだということしか頭にないです」と、期待に胸を膨らませていた。
「観ていて楽しかったでしょ? 僕も試合に観に行きたいなっていうぐらい生き生きしたプレーをしていた。日本代表はこれからさらに面白くなるんじゃないですか」
記者陣にも試合の感想を聞きながら、「本当に上手かったよね」と客観的な視点からも発言をしていた。そういったワクワクした発言を前面に押し出した理由を、彼は明かす。
「ワールドカップ(W杯)が終わって、サッカー熱が一つのお祭りとしてすぐにやっぱり冷めてしまう。僕にとって、もうW杯があったのが1年ぐらい前だったぐらいのイメージ。ここからまた日本代表を盛り上げていかなければならないというとき、これだけ若い選手たちが勢いを持ってくれると、日本代表のサッカー熱や人気がまた今後も続いていくのかなと。そういうところを含めて嬉しいです」
長友にとっては三度めのW杯の舞台。彼は過去にも世界最大の祭典のあとの大きな喪失感をいかにして埋めるかを課題に感じてきた。
「いちサッカー選手の立場のみならず、監督やサッカー協会の会長さんの立場であったり、いろいろあります。僕もファンの立場などに立って、考えていきたい。客観的な部分から見られれば、プレーも、後輩たちへの接し方も変わってくるだろうから。ちょっと客観的に日本代表を見ていく力がほしいと思っています」
そのように長友は日本代表を「ひとつのファミリー」として捉え、ピッチ外からの視点を持つことも貢献していきたいという考えを示した。
もちろんチーム内の競争も待っているが、負けるつもりなど毛頭ない。32歳の長友は泰然と構え、チームや日本のために、自分自身に何ができるかを俯瞰する力も身に付け、それをフィードバックすることで、人として、選手として、幅も広めようとしていた。
文:サカノワ編集グループ