【なでしこ】ニールセン監督が“田中美南の後継者”に指名した21歳FWとは? 土方麻椰がアジア杯で躍動「まだまだ吸収の時間」
フィリピン戦前日練習でのなでしこジャパン(日本女子代表)FW土方麻椰。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
GS全試合に出場、1ゴール。アストン・ヴィラではデュエル数1位「フォワードなのに(笑)」。
イングランドWSLのアストン・ヴィラWFCに所属する土方麻椰(Maya HIJIKATA)がAFC豪州女子アジアカップで、念願のなでしこジャパンデビューを果たした。
コロンビアU-20女子ワールドカップで5ゴールを挙げ、準優勝に貢献した土方は、その後も順調に成長を遂げ、なでしこジャパン入りへのステップを踏んできた。初招集は2024年10月に行われた親善試合の韓国戦だったが、ケガのため辞退を余儀なくされた。続く2025年7月のE-1東アジア選手権でも再び招集のチャンスが訪れたが、コンディション不良で参加は叶わなかった。
「2回の辞退があって……やっとここに来ることができた。ここからが本当のスタートだと思っています」
晴れ渡ったシドニーのトレーニングピッチで、土方は清々しい表情を浮かべる。
実質的な“初招集”の舞台は、来年のFIFAブラジル女子ワールドカップ(女子W杯)の出場権が懸かったアジアカップとなった。グループリーグではチャイニーズ・タイペイ(台湾)戦から3試合すべてで途中出場を果たした。第2戦のインド戦では途中出場から、得意のヘディングで代表初ゴールもマークしている。
「あのゴールは(ボールが)来るって思って、あそこに入り込んでいて、(山本)柚月さんのボールも本当によかった。自分の得点感覚を出せたゴールでした」
なでしこジャパンには、年代が近い選手や、かつて所属していた日テレ・東京ヴェルディベレーザ時代のチームメートも多い。それでも代表の舞台はやはり特別だという。
「めちゃくちゃ緊張しましたよ!」
そう強調する土方だが、代表キャップを重ねる先輩たちの中でも萎縮せずプレーできている背景には、昨夏に移籍したイングランド女子スーパーリーグ(WSL)での経験がある。
「イングランドの強度に慣れてきたことで、余裕を持って自信を持ってプレーできてきています。その中で一番感じているのは、ボールをもらったときのターンやキープ、背負いながら足元でボールを受けたときのプレーが、なでしこジャパンの中でも、海外の選手の中でも通用する部分があるということです」
土方がこなすポジションは多岐にわたる。トップ、トップ下、ウィング――。各国の代表選手がしのぎを削る世界屈指のリーグで、さまざまな役割を担いながらゴールへつながるプレーを見せてきた。自身の得点だけにこだわらない柔軟さも、彼女の大きな強みだ。
特に際立つのがボール奪取の多さである。前線の選手でありながら守備のスイッチを入れられるキーマンでもある。
「デュエルの回数が所属チームで一番多いんです。フォワードなのに(笑)。そこから切り替えて攻撃にチャンスを生み出せているのは自分の売りです!」
土方のプレーを見ていると、ふと頭をよぎる選手がいる。献身的な守備、味方を生かすポジショニングをピッチ上でフルパワーで続ける田中美南(ユタ・ロイヤルズ)だ。持っているスキルは異なるものの、ピッチに残すプレーの“残像”はどこか似ている。
「ベトナム戦で痺れるパスが来たんです。自分がイメージしていた通り、そのままの速いパスがバーン! って来てビックリしました。ミナ(田中)さんからのパスでした。タッチが大きくなっちゃってゴールにはできなかったんですけど……。試合後にその話をミナさんとしたら『ああいうパス、こっちにも出してね』って言われました(笑)。なでしこジャパンはパサーだらけでどこからでもいいパスが出てくるんです。その中でも自分のイメージとピッタリ合ったのはミナさんでした。本当にミナさんには驚かされっぱなしです」
ポジション取りや相手の死角に入る動きなど、感覚的に近い部分はあるだろうと想像していた。さらに、パスのイメージまで重なるとは驚きだ。
「ニルス・ニールセン監督から特別に何かをアドバイスされたということはないんですが、ミナさんの後継者になってもらいたいという言葉をもらいました。でもまだまだすべてが吸収の時間です」
そんな土方へ、田中も熱いエールを送る。
「良いもの持っていますよ。自分が2列目に入ってパッと見た時に前にいる選手って珍しいんですよ。でも彼女はいるんです、そこに。それであのパスを出せた。裏へも行けるし、足元も上手、シュートのパンチ力もあるし、マルチにプレーできる選手ですよ」
この日も2人はフリー練習でコンビを組み、裏への抜け出しからボールコントロール、シュートまでの形を何度も確認していた。
初招集とはいえ、この舞台に立てば「W杯出場」を意識せずにはいられない。
「ワールドカップ本大会のピッチに立つには、ここ(決勝トーナメント)からの得点が一番求められると思っています。スタメンで出るのは難しくても、途中出場で使ってもらっていて、そこで結果を残して初めてインパクトが残る。もう……日々セレクションです」
そう満面の笑みで語った土方は、この“セレクション”を楽しんでいるとも言う。
今大会の日本はここまでFIFAランキングでも下位チームとの対戦が続いてきた。だが、本当の勝負はここからだ。急激にレベルの上がる決勝トーナメントがいよいよ始まる。
8年ぶりの優勝へ――。その起爆剤に、土方麻椰がなるはずだ。
Photos and text by Noriko HAYAKUSA
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