【豪州】愛される水沼宏太の現在地と覚悟。首位ジェッツを支え牽引するリーダー「このチームに懸けている」
ジェッツサポーターと記念撮影する水沼宏太。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
今季初先発で渾身ゴール、元千葉のミリガン監督「非常に経験豊富で、若い選手たちを支え、導いている」
[豪州Aリーグ 22節]シドニーFC 1-2 ニューカッスル・ジェッツ/2026年3月22日/アリアンツ・スタジアム
ニューカッスル・ジェッツの水沼宏太(Kota MIZUNUMA)がシドニーFCとの一戦で今季初先発を果たし、渾身のゴールを決めて2-1の勝利に貢献した。チームは首位をキープし、2位のオークランドFCとは勝点4差だ。
ただ、そのゴールだけで、この日の水沼は語りきれない。全力でチームの勝利に向き合い続けた、その姿勢が印象的だった。
ウォーミングアップから高い集中力を示し、ダッシュのたびに手を叩いて味方を鼓舞する。ハーフタイムには最も遠いポジションから真っ先にロッカールームへ戻り、ピッチを去る際には一礼を欠かさない。日本では当たり前の所作かもしれないが、オーストラリアではそれ自体が強いリスペクトとして受け止められている。
「練習場など環境は決していいわけではなく、コーチやスタッフの人数も日本と比べたら少ない。でも僕はJ2も経験している。今は自分でスパイクも磨きますし、初心に戻って『自分はサッカーが好きなんだな』って思える環境に身を置けている。これまでの環境へのありがたみを感じられているのは、自分にとってすごくプラスだと思っています」
ジェッツを率いるのは、ジェフユナイテッド市原・千葉でもプレーした経験を持つ元オーストラリア代表のマーク・ミリガン監督だ。2025年5月の就任から半年足らずでカップ戦タイトルを獲得し、ニューカッスルの街に歓喜をもたらした。
「シドニーまでは車で2時間くらい。今日もたくさんのサポーターが来てくれて、この光景には驚きしかないです。僕が来た時は最下位争いをしていたチームが、今は上位争いをしている。5000人くらいだった観客も、勝ち始めてからは毎試合15000人くらい入るようになった。やっぱり勝つことは本当に大事です」
ミリガン監督もその価値を明確に認める。
「コウタはこのチームのリーダー。非常に経験豊富で、若い選手たちを支え、導いている」
特に18歳のウィル・ドブソンとの関係性は象徴的だ。ポジショニングやオフザボールの動き、連係の細部まで伝え、それに応える形で急速に力を伸ばしている。指揮官の理論を水沼がピッチで体現し、それを若手が吸収する――その循環がチームの好調を支えている。
もっとも、水沼自身はあくまで自然体だ。
「先輩後輩っていう認識はないですし、周りも年齢はあまり気にしていないと思います(笑)。クラブオフィスには同い年もいるんですけど、『嘘だろ』って言われますね(笑)。日本人ってこんなに動けるんだ、ってリスペクトもしてくれている。若い選手と一緒にやって、彼らより上回れれば年齢は関係ない。むしろエネルギーをもらっています。経験を出したい気持ちもありますけど、それ以上に、まだまだ成長したいという気持ちのほうが強いです」
その言葉通り、水沼の中には新たな欲求が芽生えている。
「欲がどんどん出てきています。優勝争いをしているなかで、ただそこにいる選手では終わりたくない。自分がチームを引っ張ってきたと言えるくらいの実感を持ちたい。そう思えるくらい、このチームに懸けたい気持ちが強くなっています」
1-0とリードした59分の交代時、ベンチに下がった際の表情にも、その思いはにじんでいた。
「自分の番号が出た時は『早いよ!』って思いました(苦笑)。直前にもチャンスがあって、まだプレーに関われる感覚もあったし、あそこで交代すると流れが変わる感覚もあったので……」
その後はベンチから声を張り続け、試合の行方を見届けた。その姿勢には、この一戦への強い執着が表れていた。
「ここまで来たら順位に縛られず、この欲のまま突き進むのがいいと思っています。こういう経験をしている選手は多くないので。だからこそ数字はあまり意識せず、一戦一戦に向き合いたい……と言いつつ、見ちゃいますけどね(笑)」
オーストラリアに渡って1年2か月が経った。初めての海外挑戦は刺激にあふれ、同時に“サッカー小僧”のような感覚を取り戻し、チームの勝利のために何ができるかに向き合う。首位ジェッツを支え、牽引している36歳になった水沼の魅力は、一回りも二回りも増し続けている。
Photos and text by Noriko HAYAKUSA
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