柏の栗澤新コーチが語るネルシーニョ「その出会いが人生のすべて」
柏への復帰が決まったネルシーニョ監督。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
引退を決断、トップチームコーチに抜擢。指揮官との絆について――。
柏レイソルは12月13日、ネルシーニョ監督(68歳)の就任を発表した。さらに驚かせたのが、前アビスパ福岡の井原正巳監督のヘッドコーチ、そして今季限りで引退した栗澤僚一(36歳)のトップチームのコーチ就任だった。
栗澤はネルシーニョ監督が柏を率いた2009年から14年までの一時政権下、2011年J1リーグ、12年天皇杯、13年ナビスコカップ(現・ルヴァンカップ)を制する黄金時代をともに築いた一人である。
今回、さまざまなタイミングが合致し、コーチに大抜擢された。
引退を決断した栗澤は本サイトのインタビュー取材に応じてくれた。そして現役時代の数々の思い出のシーンやライバルなどとともに、柏レイソルへの想い、指導者としての抱負を語ってくれた。
そのなかで彼はネルシーニョ監督への特別な想いを口にしていた。今回、“栗澤コーチ”が語っていたネルシーニョ新体制のキーワードを紹介したい。
※後日、栗澤のインタビューを連載シリーズとしてお届けします(いろいろな選手の話やエピソードが出てきて面白いです!!)。
――栗澤さんがFC東京から移籍してきたのは2008年シーズン序盤、それから約10年在籍してきました。改めて「柏レイソル」への想いを聞かせてください。
「自分のサッカー人生はもうあとがない、という想いで、柏にやってきました。ここで結果を残さなければ終わりだという覚悟でした。けれど……2009年にJ2へ降格させてしまいました。
そんななか2009年7月、新たに就任したネルシーニョと出会います。ネルシーニョは、『本当にこれがラストチャンスだ』と思っていた僕のすべてのエネルギーをサッカーに集中させてくれました。今思うと、それがすべてでした。
たまたまだったと言えるかもしれませんが、その出会いがあり、純粋にサッカーだけに熱を注がせてくれたのがネルシーニョでした。そういう気持ちを持てたからこそ、こうして現役を(14年間)続けられて、今があるのだと思っています」
――モチベーターとしても知られるネルシーニョ監督ですが、選手に対するスイッチの入れ方は?
「練習のグラウンドに来た時点で、勝負が始まっています。選手はグラウンドに立つときにはスイッチが切り替わっていないといけない。それぐらいその瞬間、サッカーにすべてを捧げ、目の前のプレーに集中力を持って挑むことが要求されます。そんな環境が一人のサッカー選手として成長させてくれました。毎日そういう目で見られていますから、自分に妥協せず、一人の人間としても成長できたと思います。言い換えれば、すべての選手にチャンスがあるという戦いの場です」
――栗澤さんも指導者の道に進みます。ただ……とても優しそうな栗澤選手が、そんなネルシーニョのような厳しさのある指導者になるイメージが今は沸きませんが!?
「何よりまず選手ありきだと思っています。選手も監督次第で大きく変わっていくことは、自分も経験して分かっています。ただ、目指すべきものは同じで、来年であればJ1復帰あるのみです。そのなかで、選手が思い切りプレーできるように、自分も同じ強い気持ちで臨みます。選手は敏感です。監督が負けるだけは嫌だという想いが伝われば、選手も戦います。そうやってチームが一つになることが大事になります。だから、僕は選手としてグラウンドで感じてきたことを、このタイミングだからこそまず生かしていきたいです」
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI