カミンスキーは壁の下を抜けた山中のFKをいかに「読み切った」のか
磐田のGKカミンスキー。写真:上岸卓志/(C)Takashi UEGISHI
「コースは限定できたが、壁の上か下かは分からなかった」
[J1 10節] 浦和 0-1 磐田/2019年5月3日/埼玉スタジアム2〇〇2
ジュビロ磐田のGKカミンスキーが5月3日の浦和レッズ戦、数多くのビッグセーブを見せて、無失点勝利に導いた。
ハイライトの一つが前半終了間際、ゴールほぼ正面で与えた直接フリーキックのピンチだった。キッカーはあの強烈な左足を持つ山中亮輔だ。
その振り抜かれたキックは裏をかくように壁の下を抜けてきた。しかしカミンスキーは落ち着いて反応。左に飛んで腕を伸ばしてシュートを弾き、ゴールキックに逃れた。
壁から抜けてきたボールに対応するには、ほとんど時間がなかったはず。しかし、なぜ、磐田の守護神は”読み切った”のか。試合後、彼はそのシーンを次のように”解説”してくれた。
「まず1本目のピンチ(39分の浦和の直接FK)。逆に少し距離が近すぎたのか、山中選手はフリーキックを蹴りませんでした(興梠慎三が蹴ったものの失敗)。今回はまず彼が蹴るのは間違いありませんでした」
ボールサイドに最初いたエヴェルトンは壁の”抜け穴”に加わる。磐田の壁は8枚。槙野智章と長澤和輝はその壁の後ろで、ボールの出どころが見えないように二重の壁を敷く。
カミンスキーは自分の「左」にボールが来ると読み切った。
「スカウティングと壁の作り方で、ある程度コースは限定して、読むことができました。ただ壁の上か下か、どちらを狙ってくるかはまでは分かりませんでした」
あとは山中との駆け引き。そこでシュートは壁の下を抜けてきたが、カミンスキーは瞬時に反応。ちょうど枠を捉えるかどうかのショットを、左手で弾き出すことに成功した。
コースを限定し、そこからは感覚の勝負で上回った。試合終了間際にも絶体絶命のカウンターを防ぐなど、圧倒的なアウェーの雰囲気のなかでも動じず、むしろその空気を力にして堂々と立ちはだかった――。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI