同点劇につないだ19歳の荻原拓也「強く振り抜いた」先にある浦和の未来
川崎戦で土壇場で放ったシュートでCKを獲得。同点劇につなげた浦和の荻原拓也。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI
最後のCKを獲得。19歳の粗削りな活躍が”原石”たちの闘志に火をつける。
[J1 14節] 川崎 1-1 浦和/2019年6月1日/等々力陸上競技場
浦和レッズのDF荻原拓也が川崎フロンターレ戦で55分から途中出場すると、土壇場で放った渾身のシュートからコーナーキックを獲得し、森脇良太の同点ゴールにつなげた。求められたひと仕事をした荻原だが、「それ以外のプレーが全然ダメ。個人として不甲斐なかったです」とパフォーマンスには納得せず、「ただ諦めなかったことが、結果につながったと思います。伸びしろっす」と頷いて前を向いた。
55分、浦和の大槻毅監督が最初のカードを切る。マルティノスとの交代でピッチに立ったのが、浦和ユースから昇格して2年目の荻原だった。今季リーグ3試合目の出場。それは新指揮官の期待の表れでもあった。
「相手が疲れているなか裏のスペースを狙おうと。そこを徹底的にやりました」
縦に鋭く突き抜ける突破と一発のある左足を武器にする荻原投入の意図は明快だった。立ち上がりからハードワークを続けた浦和の選手たちの運動量が落ちたなか、1点を先行された。そこで19歳のレフティに求められたのは、この状況を打開する突破口になることだった。
しかし荻原は仕掛けては簡単にボールを失い、ミスパスも繰り返した。後方にいる宇賀神友弥が奔走し、何度も必死にカバーに回った。
荻原も真っ先に反省を口にした。
「立ち上がりからすごく痺れる試合をしていて、見ていて気持ちも入るなかピッチに立ちました。でも……逆に空回りして、不甲斐ないプレーを見せてしまいました」
それでも、最後まで諦めない姿勢を見せ続けた。迎えたアディショナルタイム90+4分、荻原が相手ペナルティエリアで仕掛け、左足を振り抜く――。その一振りで浦和はコーナーキックを獲得し、そのラストプレーで森脇良太の同点ゴールが決まった。
「ややルーズボールになり『これは相手に先に触られる』と思った瞬間、『とにかく強く蹴ろう』と、ただ振り抜きました。シュートでした、ねじ込んでやろう、と。そういったプレーが結果につながるんだと感じました」
ただコーナーキックを得るために相手に当てたわけではない。ゴールに向かっていく、その姿勢が結実したと言えた。ただ、二言目には反省の言葉に変わっていた。
「でも質の部分では、まったくダメ。満足していません。最低限、ひとつ仕事ができたかなというだけです。個人としては、全然ダメでした」
得点をもたらしたコーナーキックの獲得しか、できなかったと言う。
とはいえ、それこそが”一発2を持つ荻原に求められた仕事だったのではないだろうか。
その他のパフォーマンスがどうこうと言うよりも……今回ばかりは、ゴールラインまで駆け上がり、左足を振り切った――それこそが全てであり、評価されるべきだ(加えて、宇賀神の尻ぬぐいも)。
何より荻原のそんな粗削りなところさえも生かした活躍ぶりは、これまでベンチにさえ入れずにいた選手たちにも大きな刺激を与えた。俺たちもだ、と思わせたに違いない。
もちろん全てを手放しにできる内容ではなかった。あくまでもここがスタートラインになる。とはいえ、監督交代により”サブ組”の闘志に、これまでにない熱い火がともったのは紛れもない事実だ。
まだ、どのように輝くか分からない原石たち。しかし、この日も最後まで選手たちの背中を後押しし続けたサポーターは信じている、必ずや浦和の未来を照らすダイヤモンドになるはずだと。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI