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関根貴大がドイツで踏み出した小さく、大きな一歩。「どん底」に叩き落とされた日

後半勝負かと思ったが…前半45分で交代に。

その表情からも強い覚悟が伝わってきた。(C)SAKANOWA

 ただ、関根はなかなかスペースをこじ開けられない。

 浦和レッズでは、高いボールポゼッション率を生かして関根がサイドでボールを受け、前を向いて1対1を仕掛けることによって、チームの攻撃のスイッチを入れていた。一方、この日はロングボール主体でルーズボールなどを狙い、一気に畳み掛ける狙いが感じられた。ある意味、イチかバチかの攻撃が目立った。浦和時代とは明らかに求められる役割と戦術が異なっていた。

 ボールを触る機会が限られた関根は、その貴重な機会をモノにしようと前線に突進していった。ただ、ボールを持っても、勢いはあるがどこか空回り気味で、DFの網に引っ掛かってしまう。さらにボールを奪い返そうとした際に相手を倒し、27分にイエローカードも受けた。

 また、セットプレーのすべてのキッカー役を任されていた。前日練習の際に「蹴れるか?」とシュテファン・ライトル監督から聞かれてトライしたところ評価された。前半終了間際にはFKから決定機になりかけたが……ゴールならず。0-0のままハーフタイムを迎えた。

 ところが――、後半開始のピッチに赤と黒のユニホームの背番号22はいなかった。

 関根は前半45分間で交代を告げられたのだ。サッカー人生で味わう最短の交代だった。

「前半は我慢かなと思っているところはあり、後半スペースが空いてきたときに突いて抜け出していければと思っていました。それだけに……ちょっと悔しかったです。後半にどれだけやれるかを見せられたら、また違っていたのかなとは思いましたが……」

 Jリーグでも過酷な浦和の3-4-2-1のウイングバックとして、3年半にわたってレギュラーを務めてきた。体は小さいがそのタフさに自信を持っていただけに、もっとできたはずだがという悔しさは募った。

 試合は後半開始早々に失点を許したものの、インゴルシュタットが3-1で逆転勝利を収めた。インパクトを残すことはできなかったものの、インゴルシュタットのサポーター「シャンツァー」(インゴルシュタット市民、全体の愛称でもある)からは関根をたたえる拍手も起きた。

 さすがに試合後の関根は肩を落としてていた。この一戦に懸ける想いがスタンドにも伝わってきただけに、計り知れない落胆の大きさはうかがい知れた。

【次ページ】「今までの練習が評価されたから。またその日が来ると信じて、一歩ずつ登っていくしかない」

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