【湘南】乗り越えたチーム崩壊危機の先へ「32人全戦力で立ち向かう」
湘南が1月10日に馬入で始動。笑顔が溢れた。
「湘南ベルマーレ」への改称20年目。初の3シーズン連続でのJ1の戦い。
「ベルマーレ平塚」から改称して節目の20年目を迎えた「湘南ベルマーレ」が1月10日、平塚市の馬入グラウンドで始動した。
湘南ベルマーレが始動した2020年1月10日、新たなシーズンに挑む選手たちを一目見ようと、金曜日にもかかわらず馬入グラウンドには例年以上に多くのファン・サポ―ターが駆け付け、練習の様子を見守っていた。
今年のベルマーレはどんなサッカーを展開するのか。新たに加入したのはどんな選手か。
まず期待が膨らむ一方、やや後ろめたい感情を抱くファンがいても不思議ではない。それは昨シーズンの厳しい歩みを振り返れば想像に難くない。
2019シーズンは本当に多くの苦難を乗り越えてきた。
曺貴裁前監督のパワーハラスメント疑惑行為に端を発する指揮官交代劇。台風19号の直撃による馬入グラウンドの水没。シーズン真っ只中、選手がサッカーのみになかなか専念できない状況を余儀なくされ、そのなかでチームの成績も低迷していった。
最終的にリーグ16位で踏み留まり、プレーオフのJ1参入決定戦で徳島ヴォルティスに1-1で引き分け、辛うじてJ1で3シーズン目を戦えることになった。一時はチーム崩壊の危機にあったという。
そしてシーズンオフ。杉岡大暉、山崎凌吾、山根視来、秋元陽太ら多くの主力が他チームに移籍していった。苦楽をともにした選手が離れ、新シーズンのベルマーレは本当に大丈夫だろうか? そうした思いを抱くとともに、ベースとなる選手は残留し、新たなる戦力がプラスアルファで加わった。新体制初日を迎えた選手や監督の表情は明るく、自信に満ち溢れたものだった。
希望にあふれた表情。その理由はどこにあるのか。
一つは、浮嶋敏監督の続投だ。昨年10月の現体制発足後、チームは苦しみながらもシーズン終盤、しっかり息を吹き返して切り抜けた。自信を失っていた選手の闘志に再び火を灯し、バラバラになったチームは、浮嶋監督のもとでまとまっていった。J1残留の決まった当日に続投も発表。その流れに乗り、新シーズンを迎えられることになった。
もう一つは、湘南はもはや、誰かが抜けても大崩れするようなチームでは無くなったはずだということ。浮嶋監督は練習初日、今季戦ううえで最も重要なことについて、次のように語っていた。
「自分たちの力をしっかり発揮できるように準備して、(東京五輪期間中の中断など挟み)かなり連戦も多いので、(登録メンバー)32人みんなが戦力として頑張れるように」
32人全戦力で――。 昨季は二桁ゴールを決めた選手はいなかった。チームの不足する部分を誰かが埋め合わせ、特長を引き出す。そのようにして全員一丸となって泥臭く闘うチームだ。
そのスタンスは変わらない。 これまでも主力の多くが移籍してきたが、「湘南ベルマーレ」として初めて3年連続でJ1を戦うという新たな領域にも踏み込む。
新加入選手がどのような化学反応をもたらし、浮嶋監督はどのような采配を振るうのか。開幕戦は2月21日の「金J」、ホームのBMWスタジアム平塚で浦和レッズ戦に決まった。今から待ち遠しい。
[取材・文:栗原 康]