重傷から約1年ぶりの復帰戦で6失点。有吉佐織がなでしこジャパンに足りないと感じた「声」
オランダ戦に先発した有吉(右)がチームメイトと話し合う。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
アルガルベカップの初戦前に負傷。初戦オランダ戦で復活したが…「敗因は自分たちの中にある」。
「ホント情けないです……」
有吉佐織(日テレ・ベレーザ)は目を伏せた。奇しくも昨年のアルガルベカップ初戦前に全治8か月に及ぶ右ヒザ前十字靭帯損傷の重傷を負い、そして今大会のオランダとの初戦で代表復帰を果たした。しかし、昨年の女子EURO王者に前半だけで5失点を喫し、終わってみれば2-6の大敗。あまりにも苦すぎる復帰戦となった。
現在のなでしこジャパンには”声”が少ないと以前の合宿に参加したときから感じていた。だから今年、約1年間ぶりにチームに招集されると、自ら発信していこうと心に決めていた。
それでも右サイドバックで先発した有吉は、大混乱に陥るチームを立て直せず、自分自身を責めた。
「相手どうこうではなく、敗因は完全に自分たちのなかにある」
有吉は首を捻って言う。
「ちょっとした声かけでグッとベースは上がると思うんです。でもその声が全くない……」
なでしこジャパンがどのような積み上げをして変化を遂げ、自分の役割もどう変わったのか。何より、居場所はあるのか――。
有吉の立場であれば、まず自らのパフォーマンスをいかにチームに生かせるのか、個人のすべきことに傾注しかねない。が、彼女の視線はすべて”チームのため”にあった。
なでしこの連係プレーに欠かせないのは、コミュニケーション。声によって、個々の「点」が「線」につながり、大きな力を生む。
現地時間2日のアイスランド戦、5日のデンマーク戦とグループステージ2試合、そして7日の順位決定戦と3試合を残す。昨年30歳になった有吉の中には、まず大会期間中に「絶対にチームを立て直す!」という強い使命感がある。
スタメンだろうとベンチだろうと関係ない。有吉の声が響き渡るに違いない。そのチームをつなげる”声”が、きっと現状打破と自信を取り戻す原動力になる。
取材・文:早草紀子
text by Noriko HAYAKUSA