【ルヴァン杯決勝・戦評】分水嶺はFC東京「67分の交代」。柏の流れが「一旦止まった」と感じた長谷川健太監督、「まだ来ている」と信じたネルシーニョ監督
FC東京の長谷川健太監督(左)とネルシーニョ監督(右)。(C)SAKANOWA
「このルヴァンカップが第一歩。2021シーズン、さらなるタイトルを目指して戦っていきたい」
[ルヴァンカップ決勝] FC東京 2-1 柏レイソル/2020年1月4日/国立競技場
ルヴァンカップ決勝、両チームともにアグレッシブさを見せた緊張感のある好ゲームはFC東京が2-1柏レイソルに2-1で競り勝ち、2009年大会以来11年ぶり三度目の優勝を果たした。
試合の分水嶺になったのが、FC東京の67分の交代策だった。
同点のまま試合終盤に突入し、交代カードをどう活用するか――。先に動いたのは長谷川健太監督だった。
立ち上がりは主導権を掴もうとする激しい攻防が続いた。そこでFC東京が流れに乗り、16分、レアンドロが先制。再び一進一退の展開となり、次第に柏が最前線のオルンガの高さを生かす戦いが、徐々に形になっていく。そして前半終了間際、瀬川祐輔の同点ゴールが決まる。
後半に入ると、柏が猛烈なプッシュを掛ける。オルンガ、江坂任のホットラインに、クリスティアーノと川口尚紀の右サイドが絡む分厚い攻撃を展開していく。
そして67分、「東慶悟→アダイウトン」「原大智→三田啓貴」と長谷川監督は2枚代えを敢行した。
その意図を指揮官は説明する。
「後半若干押され気味の展開だったので、どのタイミングで彼らを出して、パワーを引き出すのかを考えていました。レイソルの攻勢が一旦休まり、レアンドロの(決定的な)フリーキックもありました。ここで攻勢を仕掛けたいと思い投入しました。彼らが活力を与えてくれました」
逆に柏のネルシーニョ監督はその時間帯、動こうとしなかった。相手が布陣を変更させてきたが、そのまま推移を見守った。
すると三原雅俊と神谷優太を交代させようと準備させていた74分、アダイウトンの勝ち越しゴールが決まる。
そして78分、さらに呉屋大翔も読んで、柏は「江坂任→呉屋大翔」「大谷秀和→三原雅俊」「瀬川祐輔→神谷 優太」の3枚替えを敢行した。
ネルシーニョ監督はその時間帯の攻防と交代の意図について、次のように説明した。
「2点目を取られた時間帯、私たちはテンポを取り戻し、安定した戦い方ができていました。流れが良かっただけに、あの時間の失点は今日の結果に響きました。(78分の交代については)頭の中にあったプランに変化はなく、より確実にするために、あのタイミングでの交代になりました」
つまりネルシーニョ監督は、柏にまだ流れが“来ている”と捉えて動こうとしなかった。ただ、その一瞬できた隙を、攻略されてしまったのだ。
言い換えれば、ネルシーニョ監督は先発させた選手たちをギリギリまで“信じていた”。その姿勢もまた指揮官らしくもあった。
ともにこのルヴァンカップ(ナビスコカップから改称)を獲得している“勝負師”の対決は、結果的に、長谷川監督に軍配が上がった。采配で流れを引き寄せたとも言えるし、まさに勝負のポイント――分岐点を見逃さなかったとも言えた。
長谷川監督はガンバ大阪時代、このルヴァンカップを獲得したのを皮切りに3冠達成など黄金時代を築いた。それだけに「縁を感じる」と喜ぶ。そしてFC東京サポーターに感謝をした。
「選手たちはサポーターの思いや気持ちに応えようと、90分間本当に全てを出し尽くしてくれたと思います。そのサポーターに少しは恩返しをできたと思います。このルヴァンカップが第一歩。来シーズン、さらなるタイトルを目指して戦っていきたいと思います」
自身にとってはFC東京での初のタイトルに。激動の2020シーズンのラスト、長谷川監督はクラブ一丸で掴んだルヴァンカップに胸を張り、2021シーズンに向けて意欲を示した。
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[取材・文:塚越始]