永木亮太の苦悩、そこから浮かび上がる鹿島の課題
永木亮太(中央)と、金崎(左)、柴崎(右)。(2016年CWCより)写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
ACLのシドニー戦でMOM受賞。しかし「勝ちたかった」と肩を落とす。
「やっぱり……勝ちたかったです」
1-1で引き分けた3月13日のACL(アジアチャンピオンズリーグ)グループステージ4節・シドニーFC戦のあと、ボランチでフル出場した永木亮太はまるで負けたかのように肩を落としていた。
「チームにケガ人が相次ぎ、過密日程が続くなか、普段なかなか出場機会のない選手がこうして試合に出て、当然気合は入っていました。個人的にもなんとしても勝ちたかったです」
永木にとっては、1週間前のアウェーでのシドニー戦に続いてのフル出場。ただJリーグを含めた今季これまで公式戦7試合のうち、永木が先発したのは今回との2試合のみ。もちろんJリーグを見渡しても他にはない貴重な選手だが、チームで不可欠、という地位は築けずにいる。
それでもホームでのシドニー戦では大会取材者発表のマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた。球際の強さが際立ち、中央から崩されるシーンはほぼ皆無と言えた。ただ永木はその受賞も喜ぶ半分といった様子だ。
「ボールを回収するところは、自分のストロングでもあり、ある程度はできた印象はあります。あと細かいちょっとしたミスをなくしていきたい。今年はまだ(先発)2試合目。試合勘を徐々に取り戻して、たくさんの公式戦に出ないといけない。もっと、もっとコンディションを上げていきます」
試合終盤は選手間の距離が空くオープンな展開になった。永木は「全体のバランスを見て我慢しなければいけなかったが、もう少し攻撃参加して、ミドルシュートを狙っていっても良かったかもしれない。そこはちょっと今日の反省点です」と振り返っていた。シドニーのFWが鹿島ゴール前に居残るような状況が続き、CB昌子源は「相手選手が中途半端なポジションに残っていたので、亮太くんには『最終ラインの前にいてくれ』と伝えてました。それが正しかったかどうかは分からないですが」と説明していた。
しっかり、リスク管理はできていた。しかし一方で、リスクを冒して攻めることができなかった。そのあたりの比重をどう置くのか。勝点3を奪いに行くとき、チーム全体で意識を共有し、勝負どころを見極めスイッチを”オン”に入れられるか。最近、勝点を落とす印象が多い鹿島のテーマだ。
試合後、選手たちは「原点に立ち返ろう」と話し合ったそうだ。
「リーグ戦で負けて(広島に0-1)、今日も勝てなかったので、原点に立ち返ろうという話をしました。もう少し頑張るところだったり、体を張るところだったり、全体的に見せていかないと、勝つことはできない。これから先も勝点を落としてしまうようではいけない。気合を入れて、やり直さないといけないです」
そのように永木はチームの現状を捉えていた。そして彼自身もまた、今季に懸ける人一倍強い想いを抱いている。
「去年あまり試合に出られなかったので(ケガもありリーグ20試合出場にとどまる)、その悔しさをぶつけたいという気持ちが強いです。去年本当に悔しい思いをしたので、同じ思いはしたくありませんから」
だからこそ永木は「結果=勝利」にこだわっていた。勝点1は決勝トーナメント進出に向けて、確かにプラスだ。しかし、満足はしていない。背番号6の苦悩。そこから鹿島の課題も浮かんで見えた。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI