【指導者の視点】浦和が川崎の武器を封じたサイドの守備。酒井宏樹&関根貴大、馬渡和彰&伊藤敦樹…絶妙だった距離、怠らなかったハードワーク、徹底されたプレスバック
浦和の酒井宏樹。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI
中央の守備にも好影響。川崎が狙う「幅と深み」を与えず。
[FUJI FILM SUPER CUP] 川崎 0-2 浦和/2022年2月12日13:35/日産スタジアム
Jリーグ開幕を告げる「FUJI FILM SUPER CUP 2022」、昨季天皇杯覇者の浦和レッズが日本代表DF酒井宏樹と明本考浩のアシストから江坂任の2ゴールで、リーグ連覇中の川崎フロンターレに2-0の勝利を収めた。
浦和はこの試合、戦術的にとても整理されていた。なかでもスポットを当てたいのがサイドの守備だ。一時は押し込まれたものの危険なスペースを与えず、全体的には優位性を保ち続けて無失点での勝利につなげた。
浦和は4-4-2、川崎は4-3-3のシステムでスタートさせ、試合の大半は推移していた(終盤に両チーム3バックに変更)。そのサイドで浦和は、左に馬渡和彰と伊藤敦樹、右に酒井宏樹と関根貴大と、それぞれ2人のユニットで基本的に対応していた。
一方、川崎はウイングのチャナティップ(後半はマルシーニョ)と家長博昭に、サイドバックの登里享平と山根視来が関わりコンビネーションを作り出す形。また川崎のインサイドハーフがサイドに関わる場合、浦和はボランチがそこに対応して数的同数にしていた。
浦和のサイドでのアプローチは、距離が常に絶妙だった。そこから、それぞれがタイトなプレッシャーをかけて相手の自由を奪っていった。サイドで1対1の状況をなるべく作られないように、伊藤と関根のラインを越えられた場合、二人は必ずプレスバックしてサイドバックを助けるようにも徹底されていた。
川崎のコンビネーションプレーにもマークを上手く受け渡しながら対応。効果的なクロスボールやペナルティエリアへの侵入を許さなかった。
このサイドでの主導権を握った守備が、中央にも良い影響を与えた。
川崎は狭い局面でも一人ひとりが正確にボールを扱えて、様々なコンビネーションを駆使してゴールを奪い切ることを武器とする。このコンビネーションを発揮するには、少しでもスペースを作り、幅と深みの確保が大切になる。
サイド攻撃で脅威を与えられれば、相手はそこに人を割かなくてはいけない。そのように中央にスペースを作り出し、昨季の川崎は多くのゴールを奪っていった。
浦和はサイドの守備がハマり、中央の選手がクロスボールを跳ね返したり、崩されかけてもカバーしたり――。コンパクトなままその基本形を崩さず、無失点で終えた。
しかも、ハードワークを怠らずこの守備を続けられた。加えて守るだけでなくボール奪取からの効果的なカウンターを繰り出しての得点など、収穫は多いように見受けられる。
リカルド・ロドリゲス監督就任2年目、今回の試合を含めて、浦和は良い準備ができたなかリーグの開幕を迎えられそうだ。今季、どのように変化し成熟していくのか、注目して見ていきたい。
【著者プロフィール】
佐川祐樹(さがわゆうき)
1992年4月25日生まれ。広島県出身。広島大学大学院時に指導者キャリアをスタート。広島皆実高校サッカー部コーチ、広島修道大学サッカー部監督を経て、2018〜2020シーズンの3年間、FC今治のU-14コーチを担当。元日本代表監督でFC今治オーナーの岡田武史さんから「OKADA Method」を学び、原理原則やプレーモデルを大切にする育成法を学ぶ。現在は、山口市役所で勤務しながら山口県のサッカーに携わっている。
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