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前代未聞、鈴鹿が八百長未遂。生々しい元役員の威圧行為「わざとPKを与えろ」「監督は国に帰れ」「脅迫のような雰囲気」。没収試合と罰金500万円…今季カズ加入、Jリーグ昇格に影響

(C)SAKANOWA

役員関係者3人にも懲罰。

 日本サッカー協会(JFA)は4月5日、JFL(日本フットボールリーグ)の鈴鹿ポイントゲッターズに「八百長未遂」があったと認め、2020年JFL最終30節のソニー仙台戦を没収試合(0-3で鈴鹿の敗戦)として、またクラブに500万円の罰金を科した。今季、三浦知良が横浜FCから期限付き移籍で加わり注目を集め、Jリーグへの参加資格を得る「Jリーグ百年構想クラブ」であるが、極めて重い懲罰処分が下された。

 今回の当事者となったのは3人。鈴鹿の運営会社社長であるA氏(株式会社アンリミテッド代表取締役)、チームオーナーB氏(鈴鹿ポイントゲッターズオーナー)、チーム運営会社元役員C氏(株式会社アンリミテッド元執行役員)。

 JFAはA氏に「1か月間のサッカー関連活動の禁止」、B氏に「3か月間のサッカー関連活動の禁止」、そしてC氏に「2年間のサッカー関連活動の禁止」の懲罰を科している。

 JFAは詳細に渡って、今回の事案についてレポート。この中で今回の経緯が、本人たちの生々しい言葉とともに記録されている。

 鈴鹿は2020年11月29日のS仙台戦、負けたほうが、ライバルチームであるヴィアティン三重などライバル3チームのJ3昇格の可能性を下げられると分析。27日にA氏、B氏、C氏、監督とスタッフ2人の計5人が集まり協議し、B氏が次のように発言した。

「もう昇格も降格もないので、この試合は必ず勝たなければいけない試合ではない。負けてもいい試合なので若手や出場機会のなかった選手を使ってほしい。仮に0-1で負けていて、残り時間が少ない場合、(ロシアW杯)日本vsポーランド戦の時のように追いつこうとせず、そのまま負ける選択肢を選んで欲しい」

 翌28日(試合前日)、A氏、C氏、監督、チームスタッフ4人と選手17人が仙台市内のホテルでミーティングを実施。するとC氏がいきなり、意図的に試合に負けるよう指示したのだ。

「同一地域の他チームに昇格されないように負けてほしい」

「試合の終盤に3-0以上でリードしていなかった場合、DFラインとGKの連係ミスからオウンゴールなどで失点してほしい」

「わざと失点するようにペナルティエリア内でファールしてPKを与える」

 これに反発する選手に対し、C氏は逆上。「お前らには嫌でもやってもらう」、「お前らがやらなければ俺がやる」、「試合に負けなければ途中でグラウンドに割り込んででも試合を中止させる」、「監督は国に帰れ」など発言した。収拾がつかなくなり、A氏とC氏が退席し、監督と選手がミーティングを行った。

 そのあとミーティングに戻ったA氏は「クラブとして不正行為をしてほしいという意図は断じてない」、「明日チームは全力で戦ってほしい」とその場を収め、選手や監督と「正々堂々と戦う」意思を確認するための誓約書を交わしたそうだ。しかしこのミーティングのあと、選手5人が試合には参加せず、鈴鹿に戻ったことも報告されている。

 当時の監督は次のように振り返っている。

「脅迫のような雰囲気での話があった。失点方法まで指示していて信じられなかった。とても残念な気持ちになった。今まで選手と積み上げてきたものをこのミーティングで全て壊されたような気持ちになった」

  またスタッフ・選手に対するアンケート回答にも「『八百長しろ』という指示が試合前日にありました」と明確に断言するものもあったそうだ。

 結局、試合は鈴鹿が0-1でS仙台に敗戦。しかし、同県である三重の昇格もならなかった。ただし今回のレポートでは「意図的に負け試合をしたことをうかがわせる事情は見られなかった」ということだ。

 そして今回のレポートの結論では、同規律委員会はC氏について、「その態様は怒号を交えて執拗に行われており極めて悪質であるといえる」と指摘。一方、「本件行為は、オーナーであるB氏の第1回ミーティングにおける発言に誘発されたものであり、金銭的な利得を目的とするものではなかったこと、最終的にS仙台戦における意図的な敗退行為はなかったこと、C氏は既に執行役員を辞めチームを離れていること等は酌量すべき事情と認められる」と、情状酌量の余地もあるとして「最低5年間のサッカー関連活動の禁止及び最低1000万円の罰金」からは減罰されたということだ。

 また今回のC氏の「監督は国に帰れ」というピッチ内と全く関係のない心無い言葉は、これこそが明らかな人種差別的な発言でもある。八百長未遂のみならず、本当に「Jリーグ百年構想クラブ」として適切なのか。Jリーグの4月26日の理事会まで、今後改めて協議される。

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[文:サカノワ編集グループ]

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