描け”美しい三角形”。ベレーザの変幻自在な新スタイルが面白い!
仙台戦で攻め込む長谷川唯。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
阪口が長期離脱した穴を全員でカバー。
なでしこジャパンに多くの選手を送り出し、鮮やかなパスサッカーを代名詞に現在なでしこリーグ3連覇中――誰もが認める女王である日テレ・ベレーザが、2018シーズンは新たな理想を追求している。
今シーズンから指揮を執る永田雅人監督は、ベレーザの伝統を根底に据えながら4-1-4-1システムを採用した。劣勢になれば、中盤を4枚にも、最終ラインを5枚にも変動させ、攻撃ではポジショニング次第で適所に厚みを加える。この変幻自在のシステムを使いこなすことができれば、可能性は無限に広がる。
しかしシーズン前、選手たちは混乱に陥っていた。
これまではかなり自由度が高かった攻撃の組み立ても、簡単に持ち場を離れられず、常に相手と味方のポジショニングを把握し、かつ駆け引きをする。頭はフル回転しなければならない。
「最初はハテナ?? って感じでした」(岩清水梓)、「難しいです……」(中里優)と選手たちも動きを理解するだけで精一杯の日々を過ごした。 シーズンを戦いながら課題の一つひとつを解決し、5月26日の8節マイナビベガルタ仙台レディース戦では、徐々に浸透してきたベレーザの新しい一面を垣間見せることができた。
ポイントの一人がアンカーを任された三浦成美だ。チームの柱である阪口夢穂が右ヒザ前十字靭帯損傷と内側半月板損傷により半年以上の戦線離脱を強いられ、チームの大黒柱を欠くこととなった。ただ不慣れなポジションかつ文字通り攻守に絡むキーマンという位置を、三浦は持ち前の運動量と判断力で、見事に阪口の不在の穴を埋めてみせた。
アンカー抜擢の三浦成美を、中里、長谷川がフォロー。
守備ではセンターバックと、攻撃ではインサイドハーフと常に”美しい”三角形を形成しながら、チーム全体を動かす。さらに後半には前線に顔を出してフィニッシャーとしてゴールを狙う場面も見せた。
「まだまだですが、少しずつ理解できてきています」
そのように三浦は語っていたが、手応えを感じ取れる90分になった。
そして新たなポジションに悪戦苦闘する三浦をしっかりフォローしていたのが、インサイドハーフの中里だった。
前半はかなり下がり目にポジションを取ってケアしていたが、三浦が慣れてくると徐々にポジションを上げていった。もう一枚のインサイドハーフである長谷川唯と作る三角形のバランスが攻撃では重要になってくる。前半は燻り気味だった関係性も後半にはややその距離を縮めたことで一気に解決した。
試合は終始主導権を握っていたベレーザが、田中美南、長谷川のゴールで2-0の勝利を収めた。それでも攻撃面にはまだまだ迷いが見える。サイドを使うのか、中から勝負するのか、背後を突くべきか……その判断、タイミングを共有するところまではあと一歩のところまで来ている。
最近2連勝で5勝2分1敗の勝点17位で2位。2節に長野パルセイロに敗れたものの、そこからしっかり挽回してきた。そして6月3日、勝点19で首位を走るINAC神戸レオネッサとの天王山に挑む(ノエビアスタジアム、13時開始)。
(※永田監督と追求するベレーザの新スタイル。今後の課題や魅力について、6月2日(土)第2弾のレポートをお届けします!!)
取材・文:早草紀子
text by Noriko HAYAKUSA