×

「外国選手枠撤廃、ライセンス緩和…全て連鎖」原博実氏インタビュー【Jの挑戦➀】

Jリーグのこれからについて、原博実副理事長が語った。写真:徳原隆元/C)Takamoto TOKUHARA

 J1の競争のレベルを上げていかないと、世界に追い付けない。

FIFAワールドカップ(W杯)ロシア大会が終わり、7月18日にはJ1リーグが再開する。ヴィッセル神戸のアンドレス・イニエスタ、サガン鳥栖のフェルナンド・トーレスの加入により注目度が増すなか、Jリーグの原博実副理事長に「これからのJリーグ」について話を聞いた。Jリーグ誕生から25周年を迎え、新たなる25年へ――具体的に何に取り組むべきか。今回は外国籍選手枠撤廃、クラブライセンス緩和などについて、原副理事長に語ってもらった(3回連載/1回目)。

――アンドレス・イニエスタ選手の神戸加入決定後、Jリーグの外国籍選手枠撤廃について話題になりましたが?

 そういったことについて、そろそろ腰を据えて議論する時期に来ている。日本人選手も、外国籍選手も関係なく、競争をするのはどうだろうかと議論してもいいと思う。もちろん育成面にも課題はあり、両方に取り組む必要性を感じる。規制緩和と競争、それに育成。そのバランスが今後の鍵。

――ただ、J1、J2、J3、それぞれのカテゴリーで、クラブが求められる「役割」などが異なってきそうです。

 J1に関しては、競争のレベルを上げていかないと、世界に追い付けないと思っている。そういう意味でも規制緩和しながら、競争力を高める変化が必要ではないかと感じる。

 一方、J3はクラブ数をどこまで増やすべきか。JFLに降格するシステムを設けたら、(降格時に)収入が大きく減ってしまう。とはいえ規模拡大でどんどんチームを引き上げれば、リーグの質が低下する可能性もある。

 クラブライセンス制度で言えば、J2への昇格条件も考えないといけない。現在J2のスタジアムの基準は客席1万以上となっている。

 でもそれは『J1の1万5000人』を基準に設定されたもの。その基準は尊重する。一方で人口減の時代に突入して、街の規模はさまざま、人口の差は拡大している。陸上競技場でいいのか、サッカー専用スタジアムを増やしたいのか、ライセンスも器の大きさで決めていいものか。そのあたりも議論すべきだと感じている。観客席が少ないからダメだ、ではなく、勝ったところは上がるべきで、競争を促進させる制度を導入していくべきだと思っている。

 J2のレベルは間違いなく上がっている。それは実感する。ただ良いのか、悪いのか、どのクラブの規模も均一的になってきている。だからJ2は、どこが勝ってもおかしくない。昇格レースはまったく読めない。

 一方、ここから先は、よりクラブの個性が求められる。例えばコンスタントに育成組織から選手を輩出するクラブとか、外国籍選手枠を使わず地域の選手だけで戦うトップチームとか、そういった個性のあるクラブが出てこないと、活性化してこないんじゃないかな。

――水戸のようにじわじわとスタジアムへの入場者数が増え、新たなクラブ拠点(城里町七会町民センター/愛称アツマーレ)を設けたクラブがある一方、選手の放出と補強を繰り返し、地元でなかなか共感を得られずにいるクラブもあります。

 例えば(私が)栃木出身だから、栃木SCの話をしよう。今季J3からJ2に復帰して、社長を中心に、いろんなチャレンジをしていて面白い。ただ最近までは、J2、さらにJ1に昇格しなければいけないからと毎年選手を大幅に入れ替えていた。それではサポーターでさえ選手の名前を覚えられない。しかも栃木出身の選手がほぼいない(編集グループ追記:出生地が栃木なのは、西谷和希のみ)。

 栃木に限った話ではないね。一体、どのように考え、どのようなクラブにしたいのか。勝ち負けはもちろん大切で、そこが前提にあるべき。でも、それ以上にクラブが大切にしているものがあるべきで、それが見えてこない。監督に全て任せて、ダメだったら次の監督にまた全権を委ねる。そうではなく、各クラブが固有の特徴を持たないと。

 JJP(JFA/Jリーグ協働プログラム)の育成システム『フットパス』を活用しているが、そのスタッフの方がおっしゃるのは、クラブ哲学、地域、気候、食べ物、県民性、そういったものを整理したうえで、どういうクラブであり、どういう選手を育てたいのか。そして『地域における存在意義はなんですか?』ということ。

――確かに地域の特色を彩るなかで、クラブもその一つの存在としてあるのが理想的だと思います。

 Jリーグは“地域密着”を謳っているけど、要するに地域の特徴があって、それを生かして根付くこと。もっと地元とつながってこないと、スタジアムまで足を運んでくれないと思う。ホームグロウン制度だね。地元にかかわる選手、指導者、関係者がどれだけクラブにいるか。そこも検討すべき課題の一つだと思う。

取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI

※次回は明日7月17日(火)、テーマは「目玉はダービーへ移行――サッカー文化について」。佐伯夕利子さんから原さんが聞いたビジャ・レアルの育成組織の取り組みなど、興味深い内容になっています!

Posted by 塚越始

Ads

Ads