【なでしこジャパン】スウェーデン戦2失点目のPKは「誤審」か、本来はハンドの対象外
なでしこジャパン、ベスト8で涙。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
「ボールが予期しないところから来て腕に当たる」はノーファウル。先日の審判ブリーフィングでも説明。
[女子W杯 準々決勝]日本代表 1–2 スウェーデン代表/2023年8月11日16:30(現地時間19:30)/イーデン・パーク(NZ)
オーストラリア&ニュージーランド共催の女子ワールドカップ準々決勝、サッカー日本女子代表(なでしこジャパン)は林穂之香のゴールから攻め立てたものの、スウェーデン女子代表に1-2の敗戦を喫した。日本は2大会ぶりのベスト8進出を果たしたものの、2011年大会以来となる世界制覇はならなかった。
この試合の後半開始直後、スウェーデンのコーナーキックから味方のヘディングのボールが長野風花の手に当たって、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の介入を経て、ハンドのファウルでPKに。51分、これを決められて、2点差とされた。
VARを経て、主審は「10番(長野)が腕を広げ、体を大きく見せていた」として、長野のハンドのファウルだと説明した。
ハンドの一つの基準が『大きなバリア』。「手や腕が体の幅を大きくするような位置ある状況で、相手競技者のクロスボールをブロックする」、そのような手や腕にボールが触れた場合はファウルの対象である。その点は競技規則にも明記されている。
しかし一方、「ハンドではない」ケースとして、「手や腕が広がっているが、ボールが近くにいる味方競技者からなど予期しないところから来て腕に当たる」とも、ファウルとノーファウルの境が整理されている。
今回の長野の場合、目の前でボールが突然方向を変えて飛んできている。明らかに後者(=ノーファウル)のケースである。
また、日本サッカー協会(JFA)の先日開かれたメディアブリーフィングでも同じような例が紹介され、「ノーファウルが妥当」との説明があった(これがシュートだった場合、ボールがゴールに向かっている場合は「バリア」と解釈される場合もある)。
では、なぜ今回のケース、ハンドと判定されたのか。
VAR担当と主審両者が、長野の腕がバリアを作っていると言えるかどうかという点にのみ目が向けられて議論され、「ボールが予期しないところから来て腕に当たる」というノーファウルの条件について勘案されなかったことが大いに考えられる。
しかも、こうなるとVARの恣意的あるいは感情的なコントロールも可能になってしまうと言える。あるいは、やはり見えない差別問題も潜在するのかもしれない。JFAはこの判定について、VARルーム内あるいはVARと主審のやり取りなどを含め、国際サッカー連盟(FIFA)や国際サッカー評議会(IFAB)に改めて、なぜこのような判定が下されたのか、見解を求めるべきだろう。「ボールが予期しないところから来て腕に当たる」について言及もされていなかったならば、審判団全体の質も問われるべきだ。しかも日本は2大会連続でやや不可解なハンドのPK判定で敗れている。
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もちろん選手たちのファイトは素晴らしく、スウェーデンが日本を上回っての勝利だった。とてもエキサイティングな一戦だっただけに、やや後味の悪い判定となった。