東京ヴェルディが機能美に満ちたサッカーでJ1を視界に捉える
決勝点を奪った東京Vのドウグラス・ヴィエイラ。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
アラン・ピニェイロとドウグラス・ヴィエイラが牽引、最近4勝1分で暫定4位に浮上。
東京ヴェルディが好調だ。ゴールディンウィーク期間中には4連敗を喫したが、ここにきて調子を上げ、直近のリーグ戦5試合で4勝1分の好成績を収める。順位も暫定ながら4位に浮上している。
8月4日の対大宮アルディージャ戦ではアラン・ピニェイロとドウグラス・ヴィエイラのゴールで2-1と勝利。ゴールを決めたふたりのブラジル人FWが東京Vの攻撃を牽引した。
彼らのコンビプレーは実にシンプルだ。ブラジル人選手にありがちなテクニックを誇るかのように多くのボールタッチと高い難度の“魅せる”プレーで切り崩すことはしない。ボールを保持すると、まずは縦へのグラウンダーのスルーパスを狙う。パスの受け手も素早く呼応し、前線に飛び出す。
ふたりは本来レギュラーのマテウスより「守備力の高い嶋田を先発させた」(石井正忠監督)という大宮の右サイドを、シンプルなパスプレーで突破しながらチャンスを演出し、ゴールもマークした。
加えて、この日の東京Vはブラジル人FWに限らず、多彩な攻撃をピッチで作り出していた。渡辺皓太が精度の高いパスからゲームを作り、機を見てはドリブルでゴールへと迫り1点目をアシストした。さらに、多くの選手がチャンスと見れば積極的にミドルレンジからシュートを放ち、攻撃にアクセントを加えていた。
東京Vのロティーナ監督も「流れるように攻め込むことができた」と評価していた。各選手が不要にボールキープせず、最終ラインのパス展開も素早かった。サイドから攻略し、ゴール前にラストパスを供給するサッカーは、シンプルですこぶるリズムが良かった。
フィジカルやハードワークを重視したタフな試合が多いJ2の舞台で、ゲームの主導権を握るのは簡単ではない。パワーファイトで戦えば乱戦になる。そうしたなかではテクニックを前面に出したスタイルを遂行するのは難しくなる。
東京Vのサッカーは選手個人が魅せることは少ない。だが、チームとしての機能美を重視したスタイルは、シンプルで実に効果的な戦い方に映った。
ピッチに立つ11人の総合的能力による機能美に満ちたサッカーを展開する。今の東京VのサッカーにはJ1昇格も現実的に捉えられる安定感がある。
取材・文:徳原隆元
text by Takamoto TOKUHARA