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【サッカー日本代表】逮捕から1年、佐野海舟 復帰に賛否。JFAが説明した3つの理由とは?

佐野海舟。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

「チームの一員を家族と考えた時、再チャレンジする道を与えることのほうがいいと判断」

 日本サッカー協会(JFA)は5月23日、北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の6月シリーズ(5日:オーストラリア代表戦@パース、10日:インドネシア代表戦@大阪吹田)に臨むメンバー27人を発表した。3月シリーズでW杯の出場権を獲得した日本は、今回大幅にメンバー入れ替え。18歳の佐藤龍之介(ファジアーノ岡山)ら7人が初めて選出された。

 また、鹿島アントラーズから1FSV.マインツ05に移籍し、マインツの上位進出に貢献した佐野海舟が復帰を果たし、航大とともに兄弟で選出されている。

 佐野は昨年7月、移籍が決定した直後に都内で仲間2人とともに不同意性交容疑で通常逮捕されたあと、被害者との示談が成立して不起訴処分となった。

 その後、佐野サイドからの発信はないままだったがマインツではボランチとしてフル稼働。ブンデスリーガで今季“最も走った選手”になり、チームは6 位に食い込み来季のUEFAカンファレンスリーグの出場権を獲得した。

 今回の招集はW杯本番まで1年と迫るなか、戦力面としては、ボール奪取に長ける守備的ボランチは、遠藤がリバプールFCで出場機会を得られずにいて、守田英正もケガを繰り返しながらポルトガルリーグ優勝に貢献した。いずれも30代であり、万が一を考えると、5大リーグで進化を遂げて結果を残した佐野は、一つ貴重なオプションになり得るため、必要とされたことが分かる。

 一方、とはいえ当時の事件はサッカー界全体に大きなショックとダメージを与えた。

 その背景や実情は当事者にしか分からないが、“不起訴=無実”というわけではなく、問題を当事者間で解決したということである。ちょうど1年、日本であればプレー続行が難しかったなか、働くための人権がより尊重され守られるドイツに渡ったことでチャンスを得て、チームのために一心にプレーを続けて現在に至る。

 JFAの山本昌邦ナショナルチームダイレクターは記者会見で、まずJFAのスタンスとして、あらゆる差別・暴力・ハラスメントを一切許容しないと強調。そのうえで、佐野の選出について「JFAとしても、次の理由から選出しています」と説明した。

 一つ目が、相手被害者と話し合い謝罪していること

 二つ目が、本人が深く反省していること

 三つ目が、不起訴処分と検察が下されており、刑事事件としては罪に問われず終了していること

 その観点から招集を認めたということだ。

 また、日本代表の森保一監督は「彼は多くの方々に迷惑をかけたと思います」として、コンタクトを取ってきたなかで、深い反省が感じられたという。

 これまでも招集の是非を考えてきて日本サッカー協会内でも話し合い、決断したということだ。

 森保監督は次のように“家族”として、再チャレンジの機会を与えたいと言った。

「ミスを犯したと言えるかもしれませんが、チームの一員を家族と考えた時、指導者として、一人の人として、ミスを犯した人をそのまま社会から葬り去る、サッカー界から葬り去るのではなく、再チャレンジする道を与えることのほうがいいのではないかと判断させていただきました」

 日本代表のみならず、所属してきた鹿島アントラーズ、FC町田ゼルビア、佐野を支えてきたファン・サポーターや関係者の中でも、このタイミングでの日本代表復帰に対し賛否があるのは事実だ。

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 サッカー日本代表は、サッカーやスポーツの枠を越えた価値とブランドがあり、広く社会的な役割や貢献を果たしている。招集したからにはJFAは責任を持ち、佐野も森保監督の期待に応えたい。